映画『エターナルズ』が面白かったので原作コミックを読んでみた

エターナルズ /ニール・ゲイマン (著)、ジョン・ロミータJr. (画)、石川裕人 (訳)

エターナルズ

ジャック・カービーが遺したMARVEL創世神話にゲイマンが挑む話題作がついに邦訳! 百万年前、太古の地球を訪れた天空族セレスティアルズは一群の猿人を捕らえ、遺伝子操作を行った。 その結果、誕生したのが神の如き力を備える超人類エターナルズと、彼らの影と言うべき変異種デヴィアンツである。 敵対を運命づけられた両者は、以後、長きにわたって人類史に足跡を刻んできた… 神と悪魔として。 そして今、100万年に及ぶ両者の対立の歴史に大いなる楔が打ち込まれる。 眠れる神の目覚めと共に。 "キング・オブ・コミックス"ジャック・カービーが創造した創世神話ニール・ゲイマンが新たな一頁を書き加える注目作、ついに邦訳。

先ごろ日本でも公開され話題を集めたMCU映画『エターナルズ』、評価は賛否両論らしいですがオレ自身はかなり好きな映画でしたね。よくあるヒーロー映画に見えながら永劫に生きる者たちの物寂しさが物語全体に漂っていて、そこにとても惹かれました。そろそろ今年の映画ベストテンを決める時期ですが、オレはその中に必ず入れるでしょう。

さてその原作コミックなんですが、原作者がなんとニール・ゲイマンなんですね。映画『コララインとボタンの魔女』、『パーティーで女の子に話しかけるには』、TVドラマ『グッド・オーメンズ』『アメリカン・ゴッズ』の原作者であり、コミックでは『サンドマン』の原作を担当していますが、実はオレ、どの作品も大好きなんですよー。そんなニール・ゲイマンが原作と聞いたらこれはもう読むしかないではないですか。

物語は大枠では映画と一緒です。太古の昔地球を訪れた超生命体セレスティアルズは超人類エターナルズを遣わし、長大な歴史の中で魔族デヴィアンツと戦いながら人間たちを指導してゆきます。しかし現代になり、思いもよらぬ異変が起きてしまうのです。その中でエターナルズ同士の対立があり造反があるといった部分も一緒でしょう。

映画と違うのは登場する幾人かのエターナルズは記憶を失い、人間として生きているという部分です。つまり記憶を失ったヒーローが次第に自らの力に目覚めてゆく、という物語になっており、最初からスーパーパワー全開のヒーローたちが活躍するわけではありません。また、映画では単なるモンスターだったデヴィアンツは、コミックではヒューマノイド体形で最初から知性を持ち言葉を話し、エターナルズを陥れようと画策しています。

読みどころはやはり謎に包まれたセレスティアルズの最終目的であり、何者をも寄せ付けぬ余りに巨大すぎる体躯の威容でしょう。そのセレスティアルズが地球で目覚めるとき何が起こるのか?がこの物語の中心となり、それを巡ってエターナルズとデヴィアンツ、さらにマーベルヒーローとの戦いが繰り広げられるのです(例によってマーベルユニバースとのクロスオーバーの物語となっており、アイアンマンと名前のよく分からないマーベルヒーローが何人か出てきます)。

エターナルズとデヴィアンツは人類に対する天使と悪魔の役割を担っており、彼らを創造したセレスティアルズの目的は彼らを通し人類に対して最終的な「審判」を下すことにあるんです。こういった構成からこの物語がヒーロー物語を通して神話それ自体を再話したものだということが明らかになります。このような神話的で壮大な物語構成はニール・ゲイマンの自家薬籠中であり、実に彼らしい物語だといえるでしょう。

エターナルズ

エターナルズ

Amazon