David Bowie In Jazz (A Jazz Tribute to David Bowie) / Various Artists
デヴィッド・ボウイ没後5周年ということで、ボウイ・ナンバーのジャズ・アレンジ・トリヴュート・アルバムが発売された。そして、これが、とてつもなく、いい。 ボウイ・ファンを40年以上やっているオレがいい、と言っているのでこれは間違いなくいい。ボウイに興味がある人には是非聴いてもらいたいし、ファンだったら四の五の言わずに買いに走るべきアルバムだ。
トラックリストは次の通り。やはりアルバム『Ziggy Stardust』前後の初期の曲が多いが、「Let's Dance」や「Heroes」など中期の名曲もきちんと押さえてある。
Tracklist
1. Laila Biali - "Let's Dance"
2. Cinzia Bavelloni - "Lady Stardust"
3. Bojan Z - "Ashes To Ashes"
4. Caecilie Norby - "Andy Warhol" (feat Leszek Mozdzer)
5. Yelloworld - "The Jean Genie"
6. Eric Le Lann - "Life On Mars?" (feat Paul Lay & Sylvian Romano & Donald Kontomanou)
7. Miriam Aida - "The Man Who Sold The World"
8. Grazzia Giu - "Space Odditiy"
9. Pierre-Jean Gaucher - "Aladdin Sane"
10. Federica Zammarchi - "Lady Grinning Soul"
11. Jen Chapin & Rosetta Trio - "Starman"
12. Delta Saxophone Quartet - "Heroes"
13. Yelloworld - "Moonage Daydream"
14. Cinzia Bavelloni - "DJ"
15. Franck Wolf - "Space Oddity"
16. The Puppini Sisters - "Changes"
17. Mike Garson - "Let's Dance"
18. Keren Ann - "Life On Mars?" (bonus track)
オレはジャズには全く疎い人間なので、これらの曲の演奏者についてはまるで分からないのだが、少なくとも確かな演奏力と表現力は感じる事は出来た。ボウイの元曲をきちんと理解しそれを独自に解釈し、単なるアレンジで終わらない一個の優れた楽曲として完成していると思う。当然そこにはボウイとその曲への愛を感じることができる。
ボウイというのは不思議な人で、「リラックスして聴ける(和める)曲」をほとんど書いていない。どの曲も音の中に細かな棘やささくれが隠されているような、異様なアグレッシヴさが貫かれていた。初期のアコギ中心のフォーク・ロック時代ですらそう思う。硬質なボウイのヴォーカルの響きや、転調の多い曲展開がそのように感じさせるのかもしれない。そしてそれが彼の楽曲の一つの魅力でありユニークさであったのだと思う。
しかしこの『David Bowie In Jazz』では、そんなボウイの曲をリラックスして聴くことを可能にしている。朝の目覚めや会社帰りの疲れた時に、ボウイの曲で和めるのだ。オリジナル曲だとどうもこうはいかない。この、聴き込むことも、聴き流すこともできる絶妙なセンスがいい。思えばボウイはラスト・アルバム『★』で新世代のジャズ・ミュージシャンをバックに選んでいたが、存命であったらひょっとしてこんな感触のアルバムを出していたのかもしれない。
なおCDはAmazon他日本のオンラインCDショップでは現在「在庫なし入荷未定」になっており、どうしてもフィジカルで欲しい人はイギリスのJuno Recordにまだ在庫があるようなのでこちらで購入してみてはどうだろう(試聴あり)。またiTune Music StoreでもD/L購入できる。ヴァイナルの発売もあるのでそっちが好きな人は探してみるといい。