■Transmissions / Global Communication
Global Communication(以下GC)と言えば94年にリリースされた伝説のアルバムであり唯一のオリジナル・アルバムでもある『76:14』だろう。静謐に満たされたその音響は一聴よくあるアンビエント作と思わせながら、聴き込むほどにそれが一音一音に細心の注意を払って設計され構築された電子的シンフォニーであることが伝わってくる。ユニットの一員であるトム・ミドルトンはクラシック音楽を学んでおり、そういった素養が影響している部分もあるだろう。アルバム『76:14』は時代を超えたネオ・クラシカルであり、アンビエント・ミュージック、エレクトロニック・ミュージックの一つの金字塔としてこれからも評価され続ける名盤であることに間違いはない。
そしてその『76:14』がリマスターされ、豊かな音質へと蘇って再発されることとなった。さらにこのアルバムに加えて、Chapterhouseのリミックス作『Chapterhouse Retranslated by Global Communication - Blood Music: Pentamerous Metamorphosis』、これまでのシングル&リミックスを集めた『Curated Singles & Remixes』を加えた3枚組CDボックスセット『Transmissions』としての発売である。エレクトロニック・ミュージック・ファンにとってこれはもう必携のボックスセットだろう。なお音楽評論家ベン・カーデューによる詳細なライナーノーツの貴重な邦訳が読める国内仕様輸入盤を特にお勧めしたい。
という訳で以下にボックスセット3枚のアルバムをざっくり紹介。
●76:14 [REMASTERED EDITION]
ガーディアン紙が「底知れぬほど美しい時代を超えた傑作」と評したアンビエントテクノの名作『76:14』。その幽玄な音の響きはスピリチュアルなリラクゼーション・ミュージックとしても音の構成の妙味を楽しむコンテンポラリー・ミュージックとしても優れている。全10曲”76分14秒”のサウンドスケープを完走してそこから現実世界に還った時、心身が浄化されたかのような清々しさと穏やかな感情に満たされていることに気付くはずだ。
●Chapterhouse Retranslated by Global Communication - Blood Music: Pentamerous Metamorphosis [REMASTERED EDITION]
長々しいタイトルのアルバムだが、90年代に活躍したシューゲイザー・バンド「Chapterhouse」のアルバム『Blood Music』をGCが全面的にリミックスし「Retranslated=再翻訳」した作品が本作となる。ギター・ロックであるオリジナル作品の全てのパーツを解体し取り払い、GCの音としてほしいままに再構築した作品であり、そしてアンビエント作として完成した本作は『76:14』と比しても遜色ない高いクオリティの作品だという事が出来るだろう。
●Curated Singles & Remixes
名作『76:14』で知られるGCはこのアルバムの他にも様々なシングルや他アーチストのリミックス作をリリースしており、それらの幾つかとさらに未発表曲を集めたのがこの『Curated Singles & Remixes』となる。アンビエント調なだけではなくビートの刻まれたハウス調の曲も存在するが、それでも全体のトータリティーは整っており、GCの音のぶれなさが伺える。欲を言えばGCの全てのシングル&リミックス曲を聴いてみたかった。
TRANSMISSIONS [解説対訳付 / 国内仕様輸入盤 / 3CD / ボックスセット] (BREVOR11)
- アーティスト:GLOBAL COMMUNICATION
- 発売日: 2020/09/18
- メディア: CD