テクノDJジェフ・ミルズ+クラシック・オーケストラのコラボレーション・コンサートを観てきた

ジェフ・ミルズと日本のクラシック・オーケストラのコラボ

先日は相方さんと渋谷Bunkamuraオーチャードホールで行われた『爆クラ! PRESENTS ジェフ・ミルズ x 東京フィルハーモニー交響楽団』を観に行ってきました。これはタイトル通りテクノDJジェフ・ミルズと日本のクラシック・オーケストラ、東京フィルハーモニー交響楽団が共演を果たす、というもの。
ジェフ・ミルズは既に2005年にフランスでオーケストラとの共演を果たしており、それはDVD作品『ジェフ・ミルズ ライヴ-ブルー・ポテンシャル』で観ることができます。そしてこれが、最高にカッコよかった!オレの相方はクラシック好きで普段はテクノなんか聴かないんですが、、この映像を見せたときには素直に「ジェフ・ミルズかっこいい!」と喜んでいたぐらいです。

ジェフ・ミルズ ライヴ-ブルー・ポテンシャル [DVD]

ジェフ・ミルズ ライヴ-ブルー・ポテンシャル [DVD]

ジェフ・ミルズはその後何度もオーケストラ共演をしており、今回やっとそれが日本でも観られる、というわけなんですね。さて今回は2部構成になっており、第1部が「爆クラ!」のナビゲーター/プロデューサーである湯山玲子が「時間・音響・宇宙」をテーマにセレクトしたクラシック・現代音楽が演奏され、第2部にジェフ・ミルズがオーケストラ共演します。
ちなみに「爆クラ」というのは湯山玲子主催により「爆音クラシックを略して爆クラ。クラシック音楽を2011年5月から、ほほ毎月一回のペースで、西麻布の「新世界」というライブハウスを中心に行われている、トーク&リスニングイベント」として行われているもので、今回の「ジェフ・ミルズ x 東京フィルハーモニー交響楽団」はその50回目の記念コンサートになるのだそうです。(「爆クラ!」オフィシャルHP
今回の演目は以下の通り。東京フィルハーモニー交響楽団は栗山博文・指揮で、反町恭平がピアノとして第1部中盤3曲を演奏します。

第一部
アラム・ハチャトゥリアン / バレエ組曲「ガイーヌ」よりレズギンカ
武満徹 / 遮られない休息 I,II,III
モーリス・ラヴェル / 水の戯れ
坂本龍一 / Anger-from untitled 01
ジョン・ケージ / 4分33秒
オットリーノ・レスピーギ / 交響詩「ローマの祭り」より主顕祭


第二部
ジェフ・ミルズ
Where Light Ends
Amazon
The Bells

■クラシックの第1部

ザックリ感想を書くと、まず第1部ではハチャトウリアン、レスピーギのオーケストラ演奏はやはり迫力があってよかったですね。今回のコンサートの目的はジェフ・ミルズのプレイを聴きたいというのといっしょに、一度きちんとしたコンサート・ホールできちんとしたオーケストラによるクラシック曲を体験してみたい、というのがあったので、それが果たせて楽しめました。坂本龍一の曲はちょっと現代音楽的すぎてピンとこなかったけどこれも迫力はあった。
中盤の反町恭平によるピアノは素人の自分が聴いていても非常に巧かったな。武満徹の曲はアブストラクト過ぎてピンとこなかったけど、ラヴェルの曲はとても美しかった。コンサートホールで聴くピアノ・ソロって凄い緊張感があって、それに対する集中力がいるのが面白い体験でした。
そしてなんといってもジョン・ケージの現代音楽「4分33秒」でしょう。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、これ、4分33秒間なにも演奏しない、という曲なんです。この間コンサート・ホールのオーケストラ指揮者、奏者がじっと押し黙っている、というのが、なにしろ凄い。まあふざけた言い方すると「ネタかよ」ということにもなりますが、「演奏されない4分33秒間」を実際に体験するのはやっぱり面白い。しかもこの曲、3楽章ということになってるんですが、よく見ると指揮者が曲の始めと終わり以外に中盤で2回、一瞬だけタクトを振るんですよ。要するにこれ、楽章が変わった、ということを演奏者に伝えている、ということなんでしょううね。無音なのにもかかわらずオーケストラの決まり事をきちんと守っている(んだと思う。詳しくないのでそういう決まりごとがあるのかどうか本当は知らない)。そしてもうひとつ不思議だったのは、4分33秒と3楽章の区切りのその時間を、指揮者がどう知るのか?ということなんですよ。時計なんか見ませんから、やはり音楽家として楽章の流れとその時間をきちっと把握している、ということなんではないかと想像したんですがいかがでしょう。そういえばこの「4分33秒」、無音なのにもかかわらずiTunesで¥150で売ってますので興味のある方はドウゾ!

ジェフ・ミルズ登場の第2部

そして第1部が終わり20分の休憩後いよいよジェフ・ミルズの登場です。今回は3曲60分余りというプログラムでした。宇宙飛行をテーマとした「Where Light Ends」ではこの曲の発想の元となった宇宙飛行士の毛利衛が会場にもやってきていて紹介され、ここちょっと盛り上がりました。「Where Light Ends」はちょっとした組曲的な壮大な作品で、幻想的な宇宙とその宇宙での孤独を表現したものらしいです。続く「Amazon」「The Bells」はテクノ・ファンにはもうお馴染みの名曲中の名曲でしょう。これらの曲がオーケストラ編曲とジェフ・ミルズによるエレクトロニックによって演奏される訳なんですね。
テクノとクラシック・オーケストラが合うとか合わないとか以前に、テクノでも例えばそれがロックでも、そもそもそれはオーケストレーションと同等の音域の幅と厚さを電気的に再現しようとした音楽であるはずなので、実はこれは合わせればきちんと合うものなんじゃないか?と自分なんかは思うんですよ。もちろんそれはテクノ曲を再現したオーケストラだとテクノならではの機械的な正確なリズムは出せませんが、むしろ逆に人力によるもたつきといいますか遅延を楽しむのがこういったコラボの面白さなんではないでしょうか。それにしてもミニマル・テクノの執拗な反復を人力でやるんですから、演奏者の皆さんは腕が攣ったんじゃないだろうか!?
全体的な感想で言いますと「爆クラ!」自体が湯山玲子によるトークライブという性格を持っているらしく、最初それを知らなくて演奏の前に長々と解説が入るのには少々面食らいましたが、解説あってこそ初めて意味の分かった曲もあり、これは良し悪しだったかな。というわけで大変楽しいコンサートでした。

○ウェブ・サイト:爆クラ!presents

Jeff Mills "Where Light Ends"-Orchestre national d'Île-de-France【Digest】

○テクノの名曲をオーケストラで演奏「Amazon

http://www.nicovideo.jp/watch/sm570761:MOVIE

○テクノの名曲をオーケストラで演奏「The Bells」

http://www.nicovideo.jp/watch/sm550267:MOVIE

Where Light Ends

Where Light Ends