■コードネーム U.N.C.L.E. (監督:ガイ・リッチー 2015年アメリカ映画)
■TVシリーズ『0011 ナポレオン・ソロ』のリメイク作品
『シャーロック・ホームズ』シリーズのガイ・リッチー監督の新作映画『コードネーム U.N.C.L.E. 』を観てきましたが、とても面白く楽しめる映画でした。『シャーロック・ホームズ』シリーズ好き、昨今流行りのスパイ・ムービー好き、その他アクション・エンターティンメントが好きな方には十分お勧めできる作品じゃないでしょうか。
この『U.N.C.L.E. 』が1960年代に作られたイギリスのTVシリーズ『0011 ナポレオン・ソロ』のリメイクだということは映画好きな方なら既にご存知のことでしょうが、自分は結構な年寄りなので、このTVシリーズの日本放送版をリアルタイムで観てたんですよ(そういえば映画『ミッション・インポッシブル』のオリジナルである『スパイ大作戦』も観てたなあ。そんだけ年寄りなんですよ)。ただなにしろ小さな子供の頃だったので、意味も分からず観ていましたけどね。
それでも、『ナポレオン・ソロ』の主演の二人を演じたロバート・ヴォーンとデヴィッド・マッカラムが実にダンディでカッコ良かった、というのは印象に残ってるんですよ(←写真)。話が逸れますがオレ、やはりイギリス製作の『謎の円盤U.F.O.』ってTVドラマも好きだったんですが、これの主演となるエド・ビショップとマイケル・ビリントンが大好きで、今から考えると子供の頃からイギリスのTVドラマ俳優のカッコよさにしびれてたみたいなんですね(※ただしロバート・ヴォーンはアメリカ国籍)。…まあこれ読んでる皆さんにはどうでもいい話だとは思いますが!
■アメリカとソ連が手を組んだ?
さて今回の映画『コードネーム U.N.C.L.E.』です。物語の舞台は1960年代、東西冷戦の真っただ中にあるこの時代に、敵同士であるアメリカ諜報局CIAとソ連諜報局KGBが、とある陰謀を阻止するため手を組んじゃう!?というお話なんですな。その陰謀というのはナチス残党が興した国際犯罪組織による核兵器開発というもの。この組織を追求するためCIA工作員ナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)とKGB工作員イリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)が手を組んで、危険な任務に赴くというわけです。まあ当時のアメリカとソ連が手を組むなんてありえそうにもないことですが、この大法螺の在り方が特色的な物語となっているんですね。
まず主人公である二人がそれぞれに癖の強いキャラ分けがされていて面白いんです。二人ともスパイとしては一級の腕前を持っているんですが、ナポレオン・ソロは女好きで手癖の悪いインチキ野郎、一方イリヤ・クリヤキンはメンヘラでブチ切れ易い、といった具合なんです。この二人の持つキャラクターが物語を盛り上げる役割を果たしているんですね。まあ殆どコミカルな展開でですが!
そして主演を演じるヘンリー・カヴィルとアーミー・ハマー、この二人が男のオレでも見惚れてしまうぐらいいい男に描かれていて、なかなか目の保養になります。ヘンリー・カヴィルは『マン・オブ・スティール』で愁いのこもったスーパーマンを演じていたし、アーミー・ハマーは『ローン・レンジャー』が有名かもしれませんが、むしろ『白雪姫と鏡の女王』のおバカな王子様役が印象に強くて、「お馬鹿な色男させたら抜群だなあ」と一緒に観ていた相方さんが申しておりました。一方ヒロインを演じ『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の応急』にも出演していたスェーデン女優、アリシア・ビカンダーは男優の魅力に隠れていまひとつ精彩に欠けていたような気がします。
■溢れんばかりの60年代テイスト
そしてこの作品のもうひとつの魅力が映画全体に漂う溢れんばかりの60年代レトロ・テイストです。当時を再現した建造物だけでなく、徹底して再現された60年代チックなファッション、車両などが眺めているだけで楽しいんですね。この辺は『シャーロック・ホームズ』シリーズにおいてビクトリア朝時代のロンドンを微に入り細にわたり再現して見せたガイ・リッチー監督の手腕に負うところが大きいでしょう。
さらに音楽も60年代っぽくてスバラシイ。まあそういう自分がこの時代の音楽に詳しいわけではないのですが、全編に流れるジャズ、ソウルなどの音楽が、とてもそれっぽく雰囲気を盛り上げていて、おまけにカッコいい曲ばかり、すっかり60年代気分にさせてくれるんですね。これ、久々にサントラを買いたくなってしまいましたね。
そういった60年代の懐古テイストに合わせたのか、物語の展開はほんの少しまったりとした部分があります。これ、『007』や『ミッション・インポッシブル』みたいな現代を舞台にし、スピーディーなテンポで進んでゆくスパイ・ストーリーと比べると、当然ながらテクノロジー的に遅れている時代であることも関係しているでしょう。なにしろ今みたいにコンピューターやスマートフォンがあるわけでもなく、スパイ小道具だって限界があります。逆になんだか知らないけど万能なコンピューターやIC機器など存在しない、ローテクなスパイ活動の中にこそ、この物語の真骨頂があるのではないでしょうか。それはテクノロジーに頼らない泥臭い人間的要素であり、そこから生まれるドラマやアクションということです。そういった部分で先行する他のスパイ・ムービーと差別化が成功しており、だからこそこういった面白い作品になったのだと思えるんです。続編もありそうですが期待大ですね。…と思ってたら、え、なに、続編製作予定はないんだってッ!?なにぃ〜〜ッ!?