101匹わんちゃん大暴動〜映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』

■ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ) (監督:コーネル・ムンドルッツォ 2014年ハンガリー/ドイツ/スウェーデン映画)


ハンガリー/ドイツ/スウェーデン合作で2014年に製作公開された『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』でございます。
ホワイトでゴッド!少女と犬!狂詩曲と書いてラプソディ!…というなにやら意味ありげな日本タイトルが付いてますが、お話は要するに「野犬が暴れて街中大騒ぎさ!」といったものになっております。
舞台はハンガリーの首都ブタペスト。主人公は13歳の少女リリ(ジョーフィア・プショッタ)。リリは母親から元の父であるダニエル(シャーンドル・ジョーテール)に預けられますが、このダニエルというのが気難しい男で、リリの連れてきた愛犬ハーゲンを追い出してしまいます。ハーゲンは野犬となり、保護施設でいたぶられたり、闘犬使いの男に酷い仕打ちを受けたりして遂に怒り心頭に達し、保護施設の野犬たちと逃げ出して人間たちを襲い始めるんですな。
ええと昔『ドッグ』というタイトルの犬パニック映画がありましてな…*1

それに『ウイラード』『ベン』というタイトルのネズミパニック映画を足したような映画と言えばいいでしょうか…*2 *3

そんな感じの犬パニック映画、犬ホラー映画ってことでいいような気がしますが、そこに少女リリの孤独とか彼女と愛犬ハーゲンとの友愛とかが絡められて、一言でホラー映画、サスペンス映画と断言できない部分もあるのも確かです。
そもそも原題にもある「ホワイト・ゴッド」ってなんじゃ?ということです。犬のハーゲンは白くないのでこれは犬のことじゃなさそうです。じゃあなにか?ということでネットに監督のインタビューがあったので読んでみました。(「犬たちの怒涛の反乱にぶちのめされる『ホワイト・ゴッド』」ニューズウィーク日本版
これによるとホワイトというのは白人のことであり、ゴッドというのはその白人が他者に・ないしは犬に、神の如く絶対の権力で振る舞うことを指しているのだそうです。そしてこの作品で描かれる「犬の蜂起」は、白人社会に対する不満分子の暴動を示唆したものなのだそうです。
へええ…。
でもオレは映画の描き方から別にそんなアレゴリカルなものは感じなかったなあ。むしろ「なんか中途半端なホラーサスペンス映画」としか思えなかったけど。
むしろ感じたのは「やっぱヨーロッパのあのあたりの人間関係って冷たいしみんな結局孤独だしなんかヤダなあ」ということのほうだったな。個人主義とかそーゆーののせいでしょうか、リリの父親の冷たさとか、リリの通う音楽学校の教師のつっけんどんさとか、リリの友人のいつもシラケた様子とか、リリ自身の犬以外に心を許さないかたくなさとか、なにもかも白々としてて冷たくて他人を信じないといった雰囲気、そういうのが観ていてなんだかイヤ〜な気分だった。
しかしそういった白人社会=ホワイト・ゴッドの厭らしさは理解できたわけですから、監督の意図する所は伝わったのかもしれません。まあ、どっちにしろしょっぱい映画でしたが。
それにしてもタイトルから少女と犬の心温まる話と勘違いして映画館に来たと思われる母子連れが、映画後半の血塗れ殺戮描写に怖気だったのか映画が終わると逃げるように帰っていったのが少々気の毒でありあした。