奇想の王国 だまし絵展〜渋谷Bunkamuraザ・ミュージアム


木曜日は夏休みを貰っていたので、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムでやっている『奇想の王国 だまし絵展』を観に行ってきた。"古今東西のだまし絵の代表作が一堂に会します! "という触れ込みなんだが、ポスターにも使われている野菜・果物や魚介類を使って人の肖像画に仕立てたジュゼッペ・アルチンボルド(主要作品はこちらで)の絵を始め、ダリやマグリットエッシャー、さらには浮世絵の歌川国芳を含む、様々な"だまし絵"が展示してあった。

○アルチンボルト《四大元素「水」》、エッシャー 《物見の塔》

 

マグリット白紙委任状》、歌川国芳 《みかけはこはゐがとんだいゝ人だ》

 
ドメニコ・ピオラのこの作品はぱっと見るとなんだか分からないのだが、真ん中の円の部分に筒状の鏡面体を置くとそこに正しい絵が浮き上がって来る。「アナモルフォーズ」と呼ばれる技法なんだそうな。

○ドメニコ・ピオラ《ルーベンスの≪十字架昇架≫の場面のあるアナモルフォーズ


ただ、こういうのは結構好きなんだけど、有名作品はこれまで本などで散々目にしたことがあったから、実物を見てもとりたてて新鮮な驚きっていうのがないんだよなあ。その他の作品も17世紀に描かれていたという「絵から人物が飛び出している絵」とか「絵を描いた絵」とか「本物の陳列棚のように見える陳列棚の絵」等、トロンプルイユ(目だまし)という技法で描かれたいわゆる"メタ絵"的な作品が多く、まあ描かれた当時は斬新だったのかもしれないけれども今見るとそれほど…な感じだった。
美術史における"だまし絵的な絵画"を集めた展覧会なんだけれども、いわゆる楽しく愉快なトリックアートを集めました!というのとはちょっと違ってて、そういうのを期待してやって来た人には肩透かしだったんじゃないかな。客層を見ていると夏休みの時期だからか親子連れが多く、その人達がいちいち「凄いよねえ」「上手よねえ」「びっくりだよねえ」なんて無理して感心している声が聞こえてなんだか痛々しい展覧会だったよ。
逆に現代の作品のほうが素直に面白かった。本城直季の"ミニチュアジオラマのように見えるように加工した現実の写真"はネットでも見たことがあるが実際のサイズの作品のほうがより細部に目を凝らせることが出来て楽しい。

本城直季 《「Small Planet」シリーズより》


そしてなによりもパトリック・ヒューズ 《水の都》が凄かった。何の変哲も無い絵だが、これが左右へ視点を動かすと建物が立体画像のように見えてくる。この写真では分からないが現物を仔細に観察するとトリックがわかってくる。ああそういうことだったか!今回のだまし絵展の一番の作品だろう。

○パトリック・ヒューズ 《水の都》