暑い夏は熱い戦争に限るッ!…ってわけでもない〜映画『サマーウォーズ』

サマーウォーズ (監督:細田守 2009年日本映画)


あちこちで評判の良い『サマーウォーズ』、観て来ましたがオレにはちっとイマイチだったなあ。そもそも監督の前作『時をかける少女』もコーコーセーのウレシハズカシ胸キュンドラマってぇのが加齢臭を撒き散らす小汚ねえクソジジイに成り果てたオレにはかなりどうでもいいドラマだったんで心配してたんだが、やっぱりこの『サマーウォーズ』もノレなかった。
まずなんといっても「カレシの振りして私の家族に紹介させてくださいッ!」なんていう今どきその辺のギャグマンガでも使われなさそうな手垢まみれの古臭いラブコメ・シチュエーションってどうなのよ。んで純情もそこまでこじらせたら隔離施設送りだろってぐらいドギマギしまくる主人公ってどうなのよ。挙句の果ては鼻血ブーッ!かよ。お前は谷岡ヤスジフォロワーなのか。「アサー!」なのか。「オラオラオラオラ!」なのか。そこまでネットやらコンピューターが大好きな主人公のくせにエロサイトの一つも見たこと無い純真ヤローなのかよ。なんかどっかで流行ったらしいクサ食う男子系ってやつなのか。まあクサ食うったらハッパやってるって意味になっちまうけどな!
それと今回のテーマのひとつである田舎の大家族。いや、田舎の大家族ってなんなんだろう?どうなんだろう?そこからどういうドラマを作ることができるだろう?という切り口はいいんだと思う。この映画での描かれ方も悪くはないと思う。でもそれと仮想空間での戦いっていうテーマがなーんか水と油のような気がしてなあ。ミスマッチの面白さを狙ってたんだと思うけどやっぱり必然性を感じないんだよ。確かにラストの家族総出の戦いという部分は演出としては盛り上がったけど、逆にそこに持ち込まないとこの映画のアイデンティティが保たれなくなってしまうって無理矢理さは感じるんだよな。
あといくら数学オリンピック日本代表にかすった主人公とはいえ、レポート用紙に数字書き殴った位で解けちゃうパスワードっていうのも非現実的な気がするんだが。パスワードの質にもよるんだろうが、映画で登場する仮想空間OZってぇのは世界規模で億単位の人間のアカウント扱っているっていう設定なわけなんだから、そういうサービスがこんな脆弱なセキュリティなわけなのか?とも思えるし、セキュリティホールがあったとしてもそこ突破すんのにレポート用紙はないんじゃないのか?と思うんだが。
で、結局この物語における仮想空間での戦いの重要人物は、一族の中の一人、敵役であるハッキングA.I.「ラブマシーン」を製作したという"ワビスケ"でしかないと思うんだよな。このA.I.はアメリカで軍事目的で作られたということだが、そんなA.I.がネットに流出して世界的規模で公共機関をハックしてサイバーテロまがいのことをしていたっていうんなら、まずアメリカ国防総省が指くわえて見ているわけがないだろ。そして事態を収拾する為に何がしかの対策を早急にする筈だろ。その為には日本に協力を要請するなり超法規的措置をとるなりして製作者であるワビスケの身柄を確保し、事態収拾の業務に就かせるのが現実的な対策なんじゃないのか。その辺のちょっと数学とパソコンと花札の得意な程度の市井の小市民の皆さんにまかせっきりな訳が無かろうが。オレはアサルトライフル抱えて攻撃ヘリに乗り込んだアメリカ海兵隊の皆さんが長野の山奥に大挙して押し寄せワビスケの身柄を拘束するきな臭い映像を期待していたのにそれが無くて残念だな!ってかこれがジョン・マクレーン警部補ならたった一人で事態を収拾していた筈だがな!うは、こっちのほうがはるかに非現実的か!?
そういった見方からすると、一族のはみ出し者だったワビスケの製作したA.I.と、その一族全員のアバターたちとのラスト・バトルは、言ってみればはみ出し者扱いされたワビスケの一族への復讐の抗争であり、その終息はその長年の怨恨の和解とも取れるわけで、つまりはこの映画『サマーウォーズ』は壮大な家族喧嘩の物語だった.という事も出来るわけだな。そして人工衛星落下はその"みそぎ"なんだよ。まあかなりの大風呂敷とはいえ、随分迷惑な家族喧嘩もあったもんだな、という映画でした!