■エクスペンダブルズ (監督:シルヴェスター・スタローン 2010年アメリカ映画)
■『ランボー 最後の戦場』は「ホゲ〜ッ!」な映画だった!!
オレはもともとスタローン映画というのはそれほど好きではなかった。スタローン映画の一種の"あざとさ"が苦手だったのだ。デビュー作の『ロッキー』なんざまさにあざとさの固まりみたいなウェットでクサい映画だったし、『ランボー』シリーズからもこの過剰なあざとさとクサさはぷんぷんと臭った。あざとく、臭く、ウエットである、田舎のロックンローラーのようなエエカッコしいのスタローンはオレにとって果てしなくダサくカッコ悪く、彼がスクリーンで悲壮感たっぷりにポーズを決めれば決めるほど、観ているオレはげんなりしたものだった。しかしその見方が変わったのは『ランボー 最後の戦場』だ*1(拙ブログでの感想はこちらで)。
スタローン自身が監督した『ランボー 最後の戦場』は、”危険地帯と知っていた場所なのにも関わらず理想主義のヒロイン含む非武装市民をそこに送り届け、窮地に至ったことを知って「やれやれ」とか言いながら颯爽と助けに行く”というマッチポンプ以外の何者でもない陳腐なシナリオではあった。しかし、そこまで必要なのかと思わせるほどの火薬量とオレのようなホラーファンでさえ唖然とさせたハラワタ切り株乱れ飛ぶ徹底的な残虐描写で、シナリオの陳腐さを軽く吹き飛ばすような異様なテンションの映画として完成していたのだ。もはや《乱れ咲き》としか言いようのないその映像に「ホゲ〜ッ!」となったオレは、「スタローン、今まで酷い事言って正直すまんかった」と心の中で土下座したぐらいである(嘘。ホントはあっちの方角向いて棒読みして言った)。
■戦って、ぶっ殺して、恋なんざするわきゃねえだろうがゴルァ!
スタローンはこの『エクスペンダブルズ』で『ランボー 最後の戦場』でやったことをもう一度繰り返している。”どうせ窮地に至ることが分かっていながら強引に居残ったという理由にして理想主義のヒロインを危険な場所に置き去りにし、案の定酷い目に遭うことになったヒロインを颯爽と助けに行く”、というマッチポンプ方式はそのままに、『ランボー 最後の戦場』から受け継いだ「いやそれそこまで破壊する必要あんのか」と思わせるほどの大量の火力と、ランボーほどではないけれどももはやお手の物となったハラワタわっしょい切り株わっしょいなスプラッタ・シーンが畳み掛ける映画となっているのだ。それに加えて今回の映画のキモであるロートル・スター総出演という紅白歌合戦を見せられているような微妙な豪華さが、この映画を困窮に喘ぐ地方復興のための町興し村興しのお祭り臭く盛り上げていたのである。
よく《お祭り》と言われるこの映画だが、実際の所お祭りというのは泥臭くアナクロなものだ。《お祭り》には土着と土俗と、昔ブイブイ言わせていたジジイやヤクザが漏れ無く付いてくる。そして昔ブイブイ言わせていたマッチョな男たちが汗臭そうな肉体と運動能力を競うそのアクションは、マチズモの復権というよりそのアナクロニズムゆえにマチズモのパロディとしか思えない。だから今にも「ファイトォ〜!いっぱつぅ〜!!」と言いそうなアクション・シーンやマッチョなキーワードが散りばめられた演出が画面を彩り、暑苦しいタテノリの音楽が劇場で鳴り響くたび、オレは座席で何度もゲラゲラと笑い転げた。いや、失笑したのではない、それは、心底楽しかったからなのだ。馬鹿馬鹿しいのだが、その馬鹿馬鹿しさが、どこか突き抜けていたのだ。
■全ての漢は《エクスペンダブルズ》である
アナクロニズムの塊のような映画であるこの『エクスペンダブルズ』は、ある意味アクション・スター総出演という名のジジイ俳優リサイクル映画だ。スタローン自身も、こんな企画物じみた映画でなければ自分も生き残っていけないことを重々身に滲みて分かっていたのだろう。もはや年齢ゆえにアクションもきつい。だがスマートさや計算高さはもとより自分には向いていなかった。結局自分に出来ることは《アクション馬鹿一代》のマッチョな自分を演じきることだけだ。それはスタローンのみならず競演したジジイスターたちも一様に思っていたことだろう。そんな自分を"消耗品"と自嘲しながら、お祭りの名物である見世物小屋の出し物のように、エグくキツく泥臭くアナクロな興行を続けていくのだ。
そしてその興行を、即ち映画を盛り上げるために、なりふり構わず過激な演出を盛り込み、新奇なカードを持ち込み、兎にも角にも観客に満足してもらうこと。そうしてアクション・スターである自分を全うすること。オレはそんなスタローンに、奇しくも今回競演を果たしたミッキー・ロークの『レスラー』の如きレスラー魂を見た。レスラー魂、それは即ち、漢の魂である。漢であること、それはダンディズムというのとはちょいと違う。たとえ自らが消耗品であろうとも、それがどれだけしょーもないことであろうとも、それでもやってしまうこと。「でもやるんだよ!」とついつい雄叫びを上げてしまうこと。それが(しょーもない)漢の理なのだ。そして完成したのが、漢の映画、『エクスペンダブルズ』なのである。
■エクスペンダブルズ 予告編
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*1:実は大好きなスタローン映画はもう1本ある。それは『ジャッジドレッド』だ。脳みそ空っぽなコミックのヒーローはスタローンにあまりにも似合っていた。