二十代の頃は寝つきが悪くて、布団に入っても一時間も二時間も眠れずにいたことが多かった。その為か寝酒が癖になり、結局呑兵衛になってしまう羽目になってしまった。
しかし今は歳も歳だしそんなに呑んでばかりもいられない。だから呑まずに寝ることも出来るのだけれど、そうすると、見てしまうのである。妙なものを。素面で布団に入り寝ようとすると、眠りに入ったか入らないかぐらいの時に、突然枕元に何かの存在を感じるのだ。しかもそれは、暗闇で目を瞑っていても、形や位置が判るほどだ。色だけは真っ黒で、何なのかはよく判らない。そしてその黒い何かが、もやもやと存在感の波動を発してそこにいるのである。そんな時たいてい心臓は警鐘のように高鳴り、どくどくと脈打つ鼓動が耳にまで響いてくる。しかも最近は寝しなに部屋で聞こえる筈の無い音や声を聞いたりもする。これも相当気持ち悪い。
とまあ書いたけれども別にこれは心霊現象でもなんでもなく、金縛りの一種なのだと思う。多分そうだ。きっとそうだ。脳は眠る態勢に入っているのだけれども、神経のどこかがまだピリピリしているのだろう。しかしそんなことが判っていても気持ち悪いことは気持ち悪い。だから取り合えず一回電灯をつけて心を落ち着かせる。
ただもう一つ危惧があるのだ。本当は金縛りでもなく、ひょっとして…酒の禁断症状!?