「ドンデン返し20回超え!?」というアクション・スリラー小説『ハンティング・タイム』を読んだ

ハンティング・タイム / ジェフリー・ディーヴァー(著)、池田真紀子(訳)

ハンティング・タイム コルター・ショウ (文春e-book)

優秀なエンジニア、アリソンが娘とともに姿を消した。DVで投獄されていた元夫ジョンが突如出所、彼は自分を告発したアリソンを憎んでいるという。元刑事であるジョンは、そのスキルを駆使して逃亡したアリソンを追っていた。ジョンより早く彼女を発見してほしい――コルター・ショウのもとに依頼が舞い込んだ。依頼人はアリソンの雇い主。彼も事態を深く憂慮していたのだ。しかしほどなくして、ジョンと関係の深い犯罪組織からも二人組の殺し屋が送り込まれたことが判明した――

最近は映画の感想で「ドンデン返しがある」と書くのもネタバレ扱いされるのらしい。まあ言いたいことはわかる。「ドンデン返しがある」と知っているのと知らないのとではその「ドンデン返し」があった時の驚愕度が違う。とはいえ、この「ドンデン返し」がある事を知っているからこそ物語に興味が湧く、という事もある。作品を印象付けたいなら「ドンデン返し」の存在は分かりやすいアピールだし宣伝も打ちやすいというのは理解できる。オレも全然気にしないタチで、「ドンデン返し」が楽しみでホイホイと映画を観に行ったりもする。

という訳でジェフリー・ディーヴァーのアクション・スリラー小説『ハンティング・タイム』である。なにしろこの『ハンティング・タイム』、惹句が威勢いい。「ドンデン返し20回超え。 世界一のサプライズ作家の最新作」と豪語しているのだ。ドンデン返し20回超えだと?何がどうなってるんだ?そりゃあ興味も湧くというものではないか。ジェフリー・ディーヴァーは読んだことが無いしアクション・スリラー小説もそれほど手に付けないジャンルだけど読んでみることにしたのだよ。

物語はDV夫と二人の殺し屋に追われて逃走する母娘を救出するため、賞金稼ぎの主人公コルター・ショウが立ち上がる、というものだ。アメリカの斜陽化した地方都市を舞台にしたどこか殺伐とした空気感の漂うお話で、ただし主人公はマッチョでサバイバルに長けたヒーローで、この辺りが定番的であると同時に平凡に感じさせはする。雰囲気は一昔前のハリウッドB級アクションだし、ガサツな乱暴者が闊歩する世界はどこか西部劇みたいだ。文章はぶっきら棒で、文学性は期待しない方がいい。まあ言ってみれば実にアメリカらしい大味なアクション作なのだ。

で、こんな粗筋だけだとそんなに興味湧かないですよね?逆に、この程度の粗筋の物語にどう20回もドンデン返しを持ち込むんだ?とそちらが気になってしまう。実際読んでみるとこの「20回」というのはちょっと誇大広告ぽくはあるのだが、ただし読んでいて「通常ならこんな話の流れになるはず」という予想が次々に覆されてゆく、という場面が数多く用意されていて、そういった「クスグリ」の多さは確かに面白かった。そしてクライマックスの「大ドンデン返し」はさすがに大いに驚かされた。これは成功したと言っていんじゃないかな。それと、どういったドンデン返しになるのか?と推理しながら読むのも楽しいかもしれない。

ただまあセコイ話になるけど、確かに面白かったし楽しめたが、このお話で3000円は少々高かったなあ、と思ったのも確かではある。