Hit Parede / Róisín Murphy
アイルランドのソングライター/レコードプロデューサー、Róisín Murphy(ロイシン・マーフィー)がNinja Tuneからリリースした新アルバムは、ディスコ、ソウル、ポップ、ハウスなどのジャンルを網羅したカラフルなサウンドが特徴的だ。そして何と言っても今作の特色はドイツのビートメーカー、DJ Kozeとのコラボレーションで生みだされた作品だということだろう。DJ Kozeの万華鏡の様なポップセンスとMurphyの表現力豊かな歌唱力が見事に融合し、素晴らしい音楽世界を形作っている。また、Murphyのパーソナルな側面がうかがえる歌詞は彼女のオープンな姿勢を強調し、白昼夢のような世界観を築いている。 彼女の音楽は、流行に媚びず、自分自身が求める音楽を表現することに忠実なクリエイティビティーを持っており、そのエネルギッシュさは今もなお刺激的だ。Murphyはこれまでにも多くの革新的な音楽を生み出してきたことで知られており、この新作でもその探求心を見せつけている。
Get the Message: The Best of Electronic / Electronic
ジョニー・マーとバーナード・サムナーによって結成されたバンド、エレクトロニックのベストアルバムのリイシュー版。もともとこのアルバムはバンドの初のキャリアを総括するコレクションとして2006年9月にリリースされていたが、ボーナス・ディスクをカップリングした2枚組CDとアナログ盤という2形態で装いも新たに現代に蘇ることとなった。2枚組CDには、Bサイド曲やリミックス音源といった貴重なレア音源をたっぷり15曲収録したボーナス・ディスク付の仕様となっており、エレクトロニックの世界観を様々な角度から堪能できる全30曲が収録されている。バーナード・サムナーとジョニー・マーという英国音楽シーンのレジェンド二人に加え、このプロジェクトには他にもさまざまなレジェンドが参加しており、「Getting Away With It」や「Disappointed」にはペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントが、「For You」や「Imitation Of Life」といった楽曲には、クラフトワークのカール・バルトスが、それぞれコラボレイターとしてクレジットされている。
Hostile Environment / Creation Rebel
UKの伝説的なダブ・レゲエバンドCreation Rebelの40年以上ぶりとなるアルバム。彼らは元々On-U Soundのハウスバンドで、「Dub from Creation」や「Starship Africa」などのクラシックで知られており、往時はオレも聴き狂っていた思い出がある。なにしろ上記2作はUKダブの最高傑作の一つとして記憶されていい筈だ。そして今作では、Crucial Tony、Eskimo Fox、MagooのトリオがプロデューサーのAdrian Sherwoodと共に、彼らの重厚なダブワイズリズムに現代的なスピンを加えて戻ってたのだ。もう一つ特筆すべきなのはこのアルバムには、アーカイブテープに保存された元バンドリーダー、故Prince Far Iのボーカルがフィーチャーされているということだ。アルバムのタイトルは、元イギリス首相テレサ・メイの難民に対する物議を醸す政策と、最近のWindrushスキャンダルを指している。これは、元植民地の力によって暗くなる影の中で一生を過ごしてきたジャマイカ出身の音楽家たちにとって特に関連性がある。
Dimension Intrusion (25th Anniversary Edition) / F.U.S.E.
イギリス、オックスフォードシャー出身のリッチー・ホウティン(Richie Hawtin)はデトロイト・テクノ、アシッドハウス、ミニマルテクノ、クリックの旗手として絶大な支持を得ているテクノミュージシャン/DJだ。1993年にリリースされたアルバム「Dimension Intrusion」はリッチー・ホウティンがF.U.S.E.という名義で作り上げたデビュー・スタジオ・アルバムであり、発売25周年を記念して2019年にリイシューされたのが今作「Dimension Intrusion (25th Anniversary Edition)」となる。アルバムはエレクトロニック、アブストラクト、テクノ、アンビエント、アシッド、ダウンテンポ、ミニマルなどのジャンルを含み、音楽的な革新性、豊かな音楽的なテクスチャ、影響力といった点で非常に高い評価を得た作品となっており、もちろん必聴盤である。
Glasser / Crux
アルバム「Crux」は米ロサンゼルス出身のキャメロン・メジローによるエレクトロニック・プロジェクトGlasserが10年ぶりにリリースした作品だ。「crux」では夢のような実験的ポップと層状のエレクトロニクスが魅惑的にブレンドされ、個人のアイデンティティ、感情的な脆弱性、人間の経験といったテーマを探求している。音的には伝統的なフォーク、スコットランドのルーツを伝えるケルト、東ヨーロッパのスタイルが用いられ、これらすべてが彼女の豊かで雰囲気のあるプロダクション、複雑なボーカルハーモニー、複雑なリズムに導入されている。全体的にしっとりとしたヴォーカル曲が多く、これによりスムーズな味わいを持ち込んだアルバムとして完成している。