山尾悠子の幻想小説『飛ぶ孔雀』はオレには向いていなかったらしい

■飛ぶ孔雀 / 山尾悠子

飛ぶ孔雀

庭園で火を運ぶ娘たちに孔雀は襲いかかり、大蛇うごめく地下世界を男は遍歴する。伝説の幻想作家、待望の連作長編小説。

 最近「自分の好きな小説ジャンルはSFでも文学でもなく幻想小説なのではないか」と思ったのである。それはニール・ゲイマンエリック・マコーマックジェフリー・フォードらの幻想小説諸作を読んで感じた事だったのだが、これら作家の作品を読んでいるとある日本人作家の名前が言及されることに気付いた。それが山尾悠子である。なにやら日本幻想文学界におけるボスキャラ級の方なのらしく、これは読んでみなくてはと思って手にしたのがこの『飛ぶ孔雀』である。

この本では「飛ぶ孔雀」と「不燃性について」という二つの中編が収められているのだが、この二つは世界観が微妙に被ったものになっている。「飛ぶ孔雀」はどことも知れぬ日本の古都を舞台に超現実的な日常が進行する。「不燃性について」はやはりどことも知れぬ山頂のラボを舞台にした不可解な毎日を描くが、こちらは割とコミカルなテイストを感じる。全体的に泉鏡花を思わす古風な美文と万華鏡を覗くが如き無機的で幻惑的なイメージが展開してゆく。

ただ個人的には相当苦手な作風だったことは否めない。物語らしい物語は殆ど無く、主人公と目される人物も存在せず、作者の提示するイメージを細心の注意を払って丁寧にトレースすることで作品世界の情景を味わう、といった形態の作品であるため、物語さえ分りゃあいいと雑に小説を読み飛ばすようなオレには読み進めるのが面倒でたまらなかった。要するに向いていないらしいのだ。ううむ、どうやらまだまだ修行が足りないようである。

飛ぶ孔雀

飛ぶ孔雀

  • 作者:山尾悠子
  • 発売日: 2018/05/10
  • メディア: 単行本