最近読んだコミックあれこれ

■死都調布南米紀行/斉藤潤一郎 

前作『死都調布』 はガロ的なオルタナティヴ・コミックの画風に干乾びきったハードボイルドな情緒と、カットアップされたノン・センスなドラマが織り成されるという非常に野心的であり前衛的な作品だった。正直コミックとして面白いかは別としても「なんだこれは」という衝撃があった。この『死都調布南米紀行』でもそれは変わらないが、「シトウチヨ」という名の全裸鬼女(!)を中心に据えることにより、物語的統一性を果たすことに成功している。舞台となる南米は死と荒廃に満ちた悪夢的幻想世界であり、そこで行われる殺戮と夥しい屍とは「シトウチヨ」という鬼神へ捧げられる血塗られた供物なのだ。そういった展開も含めて超現実的な作品に仕上がっていたと思う。

■ベアゲルター(5)/佐村広明

ベアゲルター(5) (シリウスコミックス)

ベアゲルター(5) (シリウスコミックス)

 

佐村広明の送る”叛逆ズベ公アクション”『ベアゲルター』の第5巻である。これまで壮絶なアクションと謎の陰謀と陰惨な展開とを描きながら今一つ話がどこに向かっているのかつかめなかった物語だったが、この5巻においてようやく主人公たちの「目的」が固まり、さらにばら撒かれていた謎のピースがまとまって、この後は一気呵成のスピードで追い上げていくのではないかと期待させる巻だった。さらにまたもや新キャラの”ズベ公”が登場し、「女対女の戦い」はさらに加速してゆき、キャラそれぞれの楽しさもあるが「佐村広明ってこういうのホント好きだよなあ」とニマニマさせられた。

ゴールデンカムイ(21)/野田サトル

ゴールデンカムイ 21 (ヤングジャンプコミックス)

ゴールデンカムイ 21 (ヤングジャンプコミックス)

 

この21巻ではロシアから帰還し樺太南下中の杉元一行が遭遇するドラマと、鶴見中尉と土方歳三との虚々実々の駆け引きとが描かれる。登場人物が増え各陣営で和合と対立が成され、そんなこんなで物語がちょっと複雑化してきたな。杉元一行の繰り広げるいつものバカは楽しいが、複雑化した物語にオレの頭が段々付いていけなくなってきた……とはいえラストで物語がどこに舵を切るのかが明確になり、ここからは一気呵成の様な気もする。というわけで待て次巻。

■カムヤライド(3)/久正人

カムヤライド 3 (乱コミックス)

カムヤライド 3 (乱コミックス)

  • 作者:久 正人
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: コミック
 

2巻目があまりに平凡な展開だったからどうしたの?と思ってたらこの3巻で敵の姿がはっきりし、そのキャラの面白さや来歴が明らかになってやっと物語の道筋が見えてきた。新たなるアームドヒロインの登場も心強く物語を盛り上げてくれる。次巻も期待。

■GIGANT(5)/奥浩哉

GIGANT(5) (ビッグコミックス)

GIGANT(5) (ビッグコミックス)

 

だいたい奥直哉のコミックはガンガン突っ走った後人間関係(主に恋愛)のどうでもいい ダラダラ展開が1巻まるまる描かれるが今回はその状況。とはいえ後半パピコ巨大化の謎に関わっているのかもしれない謎の一団が登場し次巻の新たな展開が待たれる。

■ヴィジョン(2)/トム・キング

ヴィジョン 2

ヴィジョン 2

  • 作者:トム・キング
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

アメコミ。マーベルコミックヒーロー、ヴィジョンが「人間らしい家族との生活」を願いながらそれが破綻し、最後に凄まじい悲劇が巻き起こる!?という作品で、 これはその第2巻にして完結篇。アイズナー賞受賞作ということもあり結構期待していたのだが、う~ん、なんかこうダメな方向ダメな方向へと必然の様にズルズル引き込まれてゆく、という展開はどうも個人的に好きじゃないんだよなあ。登場人物みんな神経やら精神病んじゃうというのもなんかこういやったらしく感じてしまう。これは文学性というよりも作者の性格の悪さだと思うんだがなあ。

■AEON―アエオン―(1)~(4)/アンジェラ・ヴィアネッロ

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イタリア産コミックだが日本の漫画をとても意識した絵柄だ。フルカラー。 物語は現代のボーイミーツガール・ストーリーに人類の歴史に関わってきた強大な存在が絡むというSFファンタジーとなる。ラブストーリーのパートがとても若々しいというか幼いのでちょっとオヂサン乗れなかったのと、SFパートのほうも分かったような分かんないような超越存在の描写になんだかモヤッとしてしまった。ただし絵は綺麗だったぞ。電子書籍のみで販売。(ebook japan / AEON―アエオン―購入ページ