今度は中生代だッ!/『リアルサイズ古生物図鑑 中生代編』

■リアルサイズ古生物図鑑 中生代編/土屋健

古生物のサイズが実感できる!  リアルサイズ古生物図鑑 中生代編

大昔の地球には今は絶滅して見る事の出来ない膨大な種類の生物が生きていましたが、それらの大きさってどんなものだったんでしょうか。それらを図鑑で見るときに、10センチだとか1メートルだとか10メートルだとかの記載はありますが、数字だけだとスケール感がピンと来ないもの。

この『リアルサイズ古生物図鑑』は、様々な古生物をCGで復元し、それを現代の身近な光景やシチュエーションの中に置くことによって、それら生物のリアルなスケール感を実感してもらいたい、というコンセプトから生み出された図鑑です。確かにこれまで、例えば人間の身長や車両やビルの大きさと恐竜などの古生物を並べてその大きさを表した図説はありましたが、この書籍の面白さは、とことんシチュエーションのありかたにこだわり、なおかつ、非常にユーモラスである、といった点にあります。さらに、古生物たちの説明がまた、徹底的にユーモラスで実に親しみやすいんですよ。

例えば台所の食材の中に紛れ込んでしまった古生物や、居間に訪れてノホホンとしている古生物、律儀に青信号で横断歩道を渡る古生物など、「あれ?なんでこんなところに君がいるの?」という可笑しなシチュエーションを持ってきて、そこから生命を持って存在する古生物の生き生きとした姿を描き出そうとしているのがこの書籍なのですね。

今作は「中生代編」と銘打たれていますが、実はこれ以前に「古生代編」というのが出版されており、結構話題になっていたので覚えている方もいるかもしれません。この「古生代編」では先カンブリア時代末のエディアカラ期(約6億3500万‐約5億4100万年前)から古生代(約5億4200万 - 約2億5100万年前)まで、実に3億8000万年分の生命の歴史を辿っており、古生代ならではのまるでエヴァンゲリオン使徒みたいな珍奇な生物たちがオンパレードで登場し、大変面白く読むことが出来ました。

そしてこの「中生代編」で取り上げられているのは三畳紀ジュラ紀白亜紀の3地質年代、約2億5217万年前から約6600万年前を生きた生物から100種類以上をピックアップして登場させています。そしてこの「中生代」といえばなんといっても恐竜たちが栄華を誇った時代!映画『ジュラシックパーク』でもお馴染みなあんな恐竜やこんな恐竜が大挙して登場します!(ところでご存知の方も多いかと思いますが映画『ジュラシックパーク』に登場する恐竜はジュラ紀ではなく白亜紀の恐竜がメインなんですけどね)

まず最初に驚いたのは(特に白亜紀の)恐竜たちが、思ったほど大きくない。いや、確かに大きいっちゃあ大きいんです。史上最大級の恐竜と言われるパタゴティアンは37メートル・体重69トンあったとされていますが、これはいわゆる首長竜(正確には恐竜類 竜盤類 竜脚類)の首の長さがあったればこそで、あの有名なティランノサウルスで12メートル、これ実は大型バス程度の大きさなんですね。でもなんだかもっと大きいんじゃないか、と思っていたんですよ。

実はこの勘違いって、やはり例の『ジュラシックパーク』ならびに『ジュラシックワールド』の観すぎみたいなんですよね。本書でも触れられていますが、実はあれら映画の恐竜の大きさって、モノによってはちょっと「盛ってる」らしいんですよ。とはいえ、別に「映画は正確じゃない!」ってことを言いたいわけではなく、それはそれとして、「ホントはこのぐらいの大きさだったのかー」というのを知ることができたのは、やはりこの図鑑の図説の在り方のお陰ですよね(あと映画で「ヴェロキラプトル(通称ラプトル)」と呼ばれる恐竜は実は「ラプトル」ではなく「ディノニクス」という恐竜がモデルであるのらしい)。

逆に、水棲・魚類型恐竜の大きさは、ちょっと恐怖を感じるぐらいでした。沼から半身を出している全長15メートルのスピノサウルス、水族館の水槽を泳ぐ全長8メートルの最古の鮫クレトキシリナ、プールを泳ぐ全長16.5メートルのリードシクティクス、これらは説明がどんなにユーモラスでもその画像は「うッ・・・・・・コワイ」と思わざるをえませんでした。なんなんでしょうねこの水棲恐竜のコワサっていうのは。

もうひとつ面白かったのは「羽毛を持つ恐竜」の画像が多く挙げられていたことですね。腕の部分に羽の生えている二足歩行恐竜の姿は今までのイメージを全く覆されてしまいました。しかし「羽毛を持つ恐竜」の存在は今では通説ですが、かといって全ての恐竜にあったというわけではない。この辺どうなんだろうな、と思ってたんですが、この図鑑ではティランノサウルスには羽毛は描かれていない。実はティランノサウルス、一時羽毛恐竜説があったんですがその後覆されて鱗のある恐竜に戻っている。この辺りの最新学説が実はきちんと反映されていて、そういった検証や区別のありかたにさすが図鑑と銘打つだけのことがあるなあと思わされました。

古生物のサイズが実感できる!  リアルサイズ古生物図鑑 古生代編

古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編