■ワイルド・スピード/スーパーコンボ (監督:デヴィッド・リーチ 2019年アメリカ映画)
銃と筋肉とエンジンがブンブン唸りまくる大人気シリーズ『ワイルド・スピード』のスピンアウト作品『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』が公開されたので早速観に行ったのである。これまでよりも輪をかけて脳ミソの存在を忘れ去った映画なんだろうな、と予告編を観て思ってたので、こちらも脳ミソの存在を忘れ去って観ることにした。
今作『スーパーコンボ』、どんなふうにスピンオフかというとシリーズの主役である「脂っぽいハゲ(ドミニク/ ヴィン・ディーゼル)」が登場せず「筋肉パンパンハゲ(ホブス/ドウェイン・ジョンソン)」と「陰気な顔のハゲ(ショウ/ジェイソン・ステイサム)」の2ハゲが中心となって暴れまくる、というお話になっている。で、このパンパンハゲと陰気顔ハゲの仲が相当悪い、というのが今作のポイントとなる。
お話は「人類を滅亡させることのできる新型ウィルス兵器を自らに注入して失踪したMI6の女性エージェント、ハッティ(ヴァネッサ・カービー)」の捜索・保護をパンパンと陰気顔が政府から依頼される、というもの。しかしそのウィルスを製造したテロ組織もまたハッティを確保するため、ワイスピシリーズ最強のサイボーグ戦士ブリクストン(イドリス・エルバ)を送り込む。さらにハッティが陰気顔の妹だということも判明し事態は更にメチャクチャに・・・・・・・といったもの。
監督は『ジョン・ウィック (※クレジット無し)』 『アトミック・ブロンド』『デッドプール2』のデヴィッド・リーチ。んー、悪くは無いんだがちょっとクドイとこあるかもな。
まず中盤までの感想としては、想定内とはいえシナリオは相当ヒドイなあ、と言うことと、ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムが出演してなきゃ退屈はしないがよくあるような平凡なアクション映画にしかなっていなかっただろうなあ、ということだった。主人公二人が仲が悪いという設定は、延々と続く罵倒合戦で見せられることになるが、そこで絵が止まってしまうために段々うんざりさせられる。サイボーグ戦士ブリクストンは恐ろしいほどに強敵なのだが、例によってコイツもまた脳ミソの存在を忘れ去ったようなキャラなので、凄みと言った点においては欠けており、主人公二人を取り逃がすたびに単なる間抜けに見えてしまう。
それと何十時間だかの時限で発症する新型ウィルス兵器というのも苦しい設定で、即効性の無い殺人ウィルスだと兵器として使い勝手が悪そうだし、それまでピンピンして他に感染もしないとかって何の意味がある兵器なんだと思ってしまう。これ、プログラミングによって発症や感染方法をコントロールできる殺人ナノマシンってことのほうが説得力あったんじゃないかな。そうであれば「ウィルス分離除去作業」なるものも理解しやすいしね。意外と最初の脚本はそうだったのかもしれない。
とはいえ、こういった文句は中盤まで。これが後半、銃撃戦や肉弾戦やカーチェイスや大規模爆破のムチャクチャさがガンガンガン!とヒートアップしてゆくにつれ、「おおおおこれこそワイスピ!」とばかりにすっかり画面に釘付けになってしまう。いやもうこのムチャというかバカというか思いついても普通やらない、というアクションの楽しさは、やはりドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムあったればこそ、やつら大御所ならではの安心感だ。「こいつらなら無理なくやるよね」と思えてしまうのだ。
シナリオのインチキ振りとドタバタさ加減は最後まで足を引っ張っていたが(テロ組織でウィルス除去やっちゃえば済んだ話じゃん?指紋認証式火器のプログラム遠隔操作ってなによ?)これら全ては力技ともいえる馬鹿馬鹿しいアクションで全てチャラにできる。そんなこと言ってたら戦闘ヘリをアレでこんなふうにできるのか?になっちゃうのだが、いや絵面が面白いんだからそれでいいじゃん?と強引に思わせてくれるのだ。最後のロケーションにしても、タイムリミット迫ってんのになにを悠長な、と思えないことも無いが、そこで一発熱い家族愛を見せ付けてくれるもんだからウンウンいいよ!いいんだよ!と無理矢理納得させられるのだ。
そんな按配で大概乱暴なお話ではあったが、後半における物量の凄まじさというか金の掛け方で溜飲の下がった映画ではあった。ワイスピのマーチャンダイズ作品としてはこのぐらいが妥当だろうし、ワイスピって実のところこのラインのレベルで出来上がっているシリーズだしな。まあまあ楽しかったよ。

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