■古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 新生代編 / 土屋健 (著)、群馬県立自然史博物館 (監修)
「もしも既に絶滅してしまった古生物が現代に生きていたらどのぐらいのサイズ感なのだろう?」をコンセプトに、親しみやすい図説で好評を博した『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑』シリーズ、これまで「古生代編」「中生代編」と続いてきましたが、いよいよ「新生代編」の登場です。
ちなみに「古生代」は約5億4100万 - 約2億5190万年前、無脊椎動物の繁栄から、恐竜が繁栄しはじめる中生代の手前までを指します。「中生代」は約2億5217万年前から約6600万年前、恐竜が生息していた時期。そして「新生代」は約6,500万年前から現代まで、恐竜が絶滅し哺乳類と鳥類が繁栄した地質時代を指します。
例えば「古生代編」はエヴァンゲリオンに出て来る使徒みたいな、現代では考えられないような奇妙で奇異な形態をした生物たちの姿が圧巻でした。「中生代編」は恐竜時代となりますが、お馴染みの様に思われた恐竜の姿が、最新研究の結果として新鮮な姿となって登場する様に驚かされました。
それらの古生物たちがこの現代の、ありふれた風景やシチュエーションに紛れ込む形で図説が紹介されるのがこのシリーズの醍醐味となります。部屋の片隅にちょこなんと鎮座する不思議な形の古生代生物、スクランブル交差点を悠々と闊歩する巨大恐竜の姿、それらは、非常にユーモラスであると同時に、生き生きとした生命感を持って目の前に現れるんです。このシリーズの楽しさはまさにそんな部分にあるんですね。
ではこの「新生代編」はどうでしょう。ここでは我々の見知った哺乳類の祖先となる生物が多く登場しますが、「現代に生きる哺乳動物と比べると微妙に違った姿」の、その差異の在り方がとても興味を引くんですね。ここではネコ科、イヌ科、鳥類やげっ歯類、さらにゾウやウマなどの祖先が登場しますが、どれも似ているようで似ていない、さらにはまるで似ていなかったり、想像を絶する巨大な姿であったりするんですよ。
例えばイタチみたいにしか見えないが実はイヌ類の祖先ヘスペロキオン・グレガリウス。身の丈1.5メートルというペンギンの祖先イカディプテス・サラシ。肩高4.8メートルの巨大な馬の様にも見える生物パラケラテリウム・トランソウリクムはなんとサイの祖先。全長3メートルのげっ歯類ジョセフォアルティガシア・モネシイは巨大化したカピバラみたい。ナマケモノの祖先メガテリウム・アメリカヌムの大きさはなんと6メートル!
実は最初、「変な形の古生代生物や物々しい姿の中生代生物と比べたら、哺乳類が中心の新生代生物は見ていてちょっと退屈かな?」と思っていたのですが、どうしてどうして、実際に本を開いてみると、この「お馴染みのようでやはり違う」新生代生物の形態に、じっくりと見入ってしまう結果となりました。
さらに、新生代生物は現代の生物を参照にしやすい分、絶滅生物とは言えおそらく真実の姿にとても近い部分まで再現されているように感じるのですよ。それは全体のフォルムだけではなく毛並み皮膚感やその色彩など、化石情報だけでは判別しにくい部分を現代の生物から類推して近い部分まで再現可能になっているのではないかと感じるのですよ。つまり、よりリアルな生物として実感できる、ということなんですね。
それともう一つ、これら「新生代」の生物の生息期間は、実は一部に於いて発生したばかりの人類と被っている、という点も見逃せません。つまり、人類はこれらの生物の一部を実際に目にしているばかりか、生物によっては人類によって絶滅させられたものまであるんですね。例えばあの有名なマンモス(マモーサス・プリミゲニウス)などは、数千年前までは生きていた訳なんですよ。
そして想像してしまうんです、この本の中の幾つかの生物は、実はつい最近までどこかでひっそり生きていたか、または生きているのではないか?ということを。これは単なる妄想に過ぎませんが、そういった想像を可能にしてしまう、生物というものへの限りない興味を、この図鑑は可能にしてくれるんですね。