冥界の使者たちの隠された因縁!第一章は序章に過ぎなかった!? /映画『神と共に 第二章:因と縁』

◼️神と共に 第二章:因と縁 (監督:キム・ヨンファ 2018年韓国映画)

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ついこの間日本でも公開された“地獄エンターテイメント”映画『神と共に 第一章:罪と罰』の続きとなる『神と共に 第二章:因と縁』を観に行ってきました。実はこの第二章、最初から2部構成を念頭に置いて第一章と同時製作された作品なんですよ。

第一章では人命救助中に死亡した消防士ジャホンが霊体となり、転生を賭けて冥界からやって来た3人の使者と共に7つの地獄の裁判を切り抜けて行く、という物語でした。地獄で裁判と書くとどこか宗教めいてしまいますが、イマジネーション豊かに作り込まれたそれぞれ地獄の情景はホラーテーマのアミューズメントパークのようでもあり、その地獄と現世で巻き起こるバトルはまるで『マトリックス』を思わせるような超空間アクションとして楽しめるという、一大エンターテイメント作品でした。そして物語の中心となるテーマは母子の愛であり、正しく生きることの尊さである、という分かりやすく教訓的なものだったんですね。この第二章では、主人公となる冥界の3人の使者ウォンメク、ドクチュン、カンニムが、怨霊と化した男スホンの裁判の弁護を閻魔大王に掛け合う部分から始まります。しかし地獄では怨霊は裁判せずに消滅させられるのがしきたり、このため、閻魔大王は裁判をする為の交換条件をカンニムに命じます。それは強力な神ソンジュに守られ冥界入りが成されていない老人チョンサムを冥界に連れてくる事。しかしそれは同時に、カンニムたち3人の消去された人間時代の記憶を呼び覚ます旅でもありました。それは1000年前の、戦乱の只中にある高麗へと遡るのです。

これは相当に面白かった!「第二章はとんでもないことになっている」という噂は聞いていましたが、まさかこんなだったとは!第一章は冥界/現世を行き来しながら地獄の7つの裁判の行方を描くストレートな展開で、母への敬愛というテーマの在り方もこれまた衒いのないストレートなものでしたが、この第二章では冥界/現世といった舞台に加えて、「1000年前の戦乱の高麗」という新たな舞台が加わり、より錯綜し謎に満ちた物語が描かれて行きます。こういった、「第1部で世界観をがっつり作り込み第2部でそれを縦横無尽に展開し尽くす」といった構成の在り方はかの大傑作映画『バーフバリ』を思い出させましたね!

さらに現世においては新たなキャラ、ソンジュ神が登場し冥界の使者たちを引っ掻き回します。このソンジュ神を演じるのが『新感染 ファイナル・エクスプレス』のマ・ドンソク、見た目が相当コワイ俳優さんで、いったいどんなオソロシイ暴れっぷりを見せるのか!?と思ってドキドキしながら観ていたら意外や意外、これが結構なヘタレの上に情に篤い善人振りで、おまけにそこここで剽軽さを披露して笑いを取り、うわ、こんなチャーミングな俳優さんだったのか!とびっくりしました。この「現世篇」ではソンジュ神と冥界の使者ヘウォンメク、ドクチュンが、貧困にあえぐある家族を救おうと奮闘する人情ドラマが展開するのですよ。

一方冥界ではカンニムとスホンが様々な地獄の裁判所を経巡りますが、ここで「カンニムら冥界の使者3人は何故こんな仕事をしているのか?何故人間であった頃の記憶を消されているのか?彼らは一体何者だったのか?」が徐々に明らかになってゆき、ここから本作の核心であるテーマに迫ってゆくという訳です。それは1000年前、朝鮮半島の覇権を賭けて繰り広げられていた、高麗人と女真族との終わる事なき戦いにまつわる物語だったのです。このパートにおける厳寒の朝鮮半島北部の光景、そこを駆る高麗人戦士の厳めしい甲冑、そして女真族との血塗れの戦いの様は、どこまでも鬱々たる空気に満ち、ここで明らかになる【真実】は、ひたすら重く残酷で悲痛な運命に満ちていたのです。

正直『第一章』を観た時は「地獄のVFXが凝ってたねーアクションは派手だったねー母子愛のテーマはちょっとウェット過ぎたかなー」程度の感想だったのですが、『第二章』のこの「高麗篇」では臓腑を抉るかのような驚くべきドラマが展開し、思いもよらない着地点が用意されているんです。物語は現世と地獄、過去の高麗という遥かなる時空を経巡りながら、笑いと涙、愛と裏切り、希望と絶望との間を目まぐるしく行き来します。これら重層的に連なるエピソードが最後に混然一体となって極上のドラマを生み出しているんですね。またしても「韓国映画恐るべし」と唸らされることになった作品でした。そしてこの『神と共に』、なんと第三章の構想もあるそうです!