マイク・
ミニョーラの大傑作オカルト・コミック『
ヘルボーイ』、この巻で一応のラストであるらしい。正確には前回刊行された『
ヘルボーイ:疾風怒濤』が
ヘルボーイ・サーガの大団円となり、この『地獄の花嫁』は『疾風怒濤』以前の
ヘルボーイの活躍を辿った短編集の形となっている。6作が収められているが
ミニョーラがグラフィックを描いたのは1作のみ(『ウィッティア家の遺産』)で、あとは原作に留まりグラフィックは別アーチストが描くことになる。これら別アーチストの手になる作は
ミニョーラ原作の雰囲気を上手く伝えてはいるが、アーチストにより若干クオリティが低いのがちょっと残念。とはいえ
ミニョーラ自体もどんどん抽象化の進んだグラフィックへと変貌してきているので、この辺は良し悪しだな。その中では
ヘルボーイ・ミーツ・
ルチャリブレという展開を見せる『
ヘルボーイ・イン・メキシコ 酔生夢譚』がなにしろユニーク。そしてタイトル作『地獄の花嫁』は
古代イスラエル王ソロモンにまで遡るおぞましい呪いを描いた重厚な作品であり、さらに
キリスト教によって邪教として圧殺されたある豊かなコロニーの悲劇を描いている点で読み応えがあった。ただグラフィックがなあ……。なお"
ヘルボーイ・シリーズのラスト"とは書いたが、実は
ヘルボーイが故郷である地獄を巡る『
ヘルボーイ・イン・ヘル』という新章が新たに始まるらしい。
■ラストマン(4) / バラック, ヴィヴェス, サンラヴィル
異世界格闘ファンタジーとして始まった
バンドデシネ『ラストマン』だが、巻を重ねるごとにその様相は刻々と変化し、その予測の付かない展開の仕方に作者チームの並々ならぬ野心と才能をうかがうことが出来て、そういった部分が非常に楽しめるコミックなんだよな。この4巻では
現代社会としか思えない都市を舞台に主人公母子・
アドリアンとマリアンヌが、彼らを捨てた男リシャールと対面することになるが、そこからがまた驚く様な展開で、またもやにんまりとさせられるのだ。とはいえ「格闘ファンタジー」という骨子はきっちり守っていて、しかもそれがどんどんと凄みを増していく辺り、いやあホント続巻が楽しみ過ぎるコミックだなあ!
ダンジョンに潜り魔物を倒しながらそれを料理してゆく、というユニークなファンタジー・コミック『
ダンジョン飯』、いよいよ冒険のそもそもの目的だった"ドラゴン討伐"の回に突入。で、これでお終いかな?と思ったらまたまた新たな伏線が飛び出してまたもや面白くなってきそう。前回辺りから「モンスター料理」といったコンセプトは薄れてきているのだが、ファンタジー物語として十分こなれてきていてこれはこれでOK。
古代ローマに実在した
博物学者
プリニウスの足跡を辿るコミック『
プリニウス』、十分面白いんだが作者である
ヤマザキさんととりさんの
ストーリーテリングのバランスがどうもまちまちで、お互いちょっと遠慮しながら製作してるんではないかなあ、という気がしないでもない。そういう部分で展開の仕方に時々"むら"を感じるんだが、この5巻ではいい具合に両者ノリながら描いているように感じ、物語も佳境に入ってきたのであった。
■ダーリンは71歳 / 西原理恵子
『ダーリンは70歳』に続き
サイバラ+高須院長カップルの熟年の恋を面白おかしく時には切なく描く『ダーリンは71歳』、今回もとどまる所を知らぬ
サイバラ節が全開だが、この『71歳』では
サイバラのラブラブデレデレぶりがさらに加速し、いつも怪気炎を上げているあの
サイバラがどことなく乙女チックになっている所が実に微笑ましい。同時に高須院長の傑物ぶりを示すエピソードもあれこれ盛り込まれ、まあネットじゃあれこれ言う人もいるけど、なんせ基本は爺さんなんだし、それにしちゃあたいした人だと思うけどなあ。
宇宙人に肉体を改造され、不死身の超兵器となった爺さん・犬屋敷と、青年・獅子神とが善と悪に分かれて戦うコミック『
いぬやしき』、この両者のガチバトルがいよいよ展開する巻となったが、例によって
奥浩哉独特の精緻に描かれた都市の情景をばんばん見開きで使い、相変わらずスピード感溢れる展開を観ることが出来る。というかそれだけのコミックでありストーリーは甚だ薄っぺらいのだが、そういうもんだと割り切って読めば楽しめる。