購入コミック覚書 / 久正人の『エリア51(8)』と『グレイトフルデッド』

エリア51(8) / 久 正人

エリア51 8 (BUNCH COMICS)

エリア51 8 (BUNCH COMICS)

エリア51全土と全ての神々を巻き込んだ「原初の蛇」と主人公との戦いがいよいよ終結。殆ど不死身の存在である「原初の蛇」を相手に絶体絶命の主人公の下へ駆けつける王子に勝算はあるのか。オーディンとゼウスの神々の威信を賭けた戦いの行方は。物語は最高潮のテンションで怒涛のクライマックスを迎える。いやこれは素晴らしいね。久正人の成し遂げたひとつの到達点と言ってもいい超絶的なドラマ展開だった。もう一度書くが本当に素晴らしかった(パチパチパチパチ)(スタンディングオーベーション)。この8巻後半は事件の後始末とその後の登場人物、そしてインターミッションともいえる小話が挟まれる。だがこの「第2時蛇の動乱」を超えるとんでもない事件がまたしても主人公を待っているのだろう。期待は膨らむばかりである。

グレイトフルデッド(上)(下)/ 久 正人

グレイトフルデッド(上) (シリウスKC)

グレイトフルデッド(上) (シリウスKC)

グレイトフルデッド(下) (シリウスKC)

グレイトフルデッド(下) (シリウスKC)

久正人の幻の処女作が新装版になりやっと発売。物語は清朝末期の中国を舞台に、霊幻道士の少女コリンが仲間(じじい)と協力し合いながらキョンシーを倒してゆく、というもの。しかもこのコリン、普段は娼館の娼婦で、客とコトを行っているシーンや全裸シーンがポンポン入ってくる、というオマケつき。
処女作ということで冒頭は作画・構成とも荒いし、今でも見難いコマ割と絵はさらに見難いものになっているが、これが話を追うごとにどんどん洗練されてゆくのがファンとしても楽しい。霊幻道士ならではの戦闘の仕方や武器のユニークさも久正人らしいこだわりぬいたマニアックさで実に楽しい。
物語は前半はキョンシー退治一辺倒で若干飽きるのだが、これが次第にどんどん変り種キョンシーを登場させ、さらに物語も1話完結ながら巨大な陰謀の存在を徐々に明らかにしてゆく部分に処女作を描きながらの試行錯誤のあとを見ることが出来る。クライマックスなんてキョンシーどころじゃないとんでもない怪物が登場するところなんざ嬉しいね。
さらにラストでは歴史上の人物を登場させ物語とリンクさせてゆくところなどは、この後に描かれる『ジャバウォッキー』の片鱗が既にうかがえる。惜しむらくは打ち切りになったために主人公コリンと母との謎めいた因縁が結局明かされぬまま終わってしまったことだろう。というわけで久正人のエッセンスが沢山詰まったこの『グレイトフルデッド』、ファンなら当然ながら買いだ。