最近読んだコミックあれこれ

ゴールデンカムイ(20)/野田サトル

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックス)

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックス)

 

出ました、待望の『ゴールデンカムイ』第20巻。樺太での大波乱の後に杉元ら一行が目指す場所は!?という展開なんだが、今巻では舞台がセパレートしている上に後半、「鹿児島生まれの眉毛が変な形のあんちゃん」鯉登さんの若かりし頃のエピソードが延々と語られて物語はそれほど進展していない。いわゆるサブストーリーの充実、というか寄り道なのではあるが、人気作による水増しとも言えるかもしれないけれども、これはこれでゴールデンカムイ世界が深まっていて面白かったな。 

波よ聞いてくれ(7)/沙村広明

波よ聞いてくれ(7) (アフタヌーンKC)

波よ聞いてくれ(7) (アフタヌーンKC)

 

『波よ』7巻、今回は引き籠り青年の居る家庭の取材である。普通に描けば深刻な話からイイ話への予定調和的展開になるところを、主人公ミナレの暴力的で破壊的な性格が事態をあらぬ方向へと導いてしまうのである。沙村広明という漫画家はその本質に相当なエゲツナサを兼ね備えていて、だからどんなにギャグに持っていき笑わせてくれても、その背後にべったりとした血生臭さを感じてしまうのだが、逆にこの紙一重のバランスが物語を面白くさせている。そして後半、実際に北海道で起こったある事件が描かれ出し、一気に佳境に入るのだ。

■レベレーション(啓示)(5)/山岸涼子

レベレーション(啓示)(5) (モーニング KC)

レベレーション(啓示)(5) (モーニング KC)

 

山岸涼子独特の視点からジャンヌ・ダルクを描くそら恐ろしいコミック第6巻。コンピエーニュ包囲戦において遂にジャンヌは捕縛される。拘束されたジャンヌを巡る政治的思惑と駆け引きがドロドロしていてなかなかに香ばしい。”神の声”を聞くジャンヌを山岸は単なる狂信の成せるものなのか超常のものなのかあからさまに描くことをしないが、しかし信仰から導き出される強烈な自己暗示により運命を味方につけそしてその運命に裏切られてゆくジャンヌの姿からは、人の精神が生み出すものの不可思議さと恐ろしさを感じてしまうのだ。 

クトゥルフの呼び声/田辺剛

クトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)

クトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)

  • 作者:田辺 剛
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: コミック
 

「今さらクトゥルフかあ」 と思いつつ表紙の禍々しさに負けてついつい購入してしまった1冊だが、あにはからんや、これが非常にクオリティの高い作品だった。まずなにより絵がいい。巧い。さらにあたかも海外コミックの様に一コマ一コマ精緻な描き込みをしており、無駄ゴマが全くない。語り口調は濃厚で陰鬱、ラブクラフト作品漫画化としてはかなり優れた部類に入る作品なのではないか(他知らんけど)。作者である田辺剛氏のラブクラフト・コミカライズ作品は多数出ているようで、これらも気になる。

アオイホノオ(22)/島本雅彦

アオイホノオ (22) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

アオイホノオ (22) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

 

 冬休みを利用して北海道に帰省したホノオ君だが北海道でも熱く燃えてるんだッ!?という22巻。しかも美人なアシスタントまで登場し物語はそっちの方向へと一気に佳境を迎えるのかッ!?と思わせつつやっぱりオクテなホノオ君になぜか若干安心したんだッ!? 

プリニウス(9)/ヤマザキマリとり・みき

プリニウス9 (バンチコミックス45プレミアム)

プリニウス9 (バンチコミックス45プレミアム)

 

いよいよというかやっとというかプリニウスと皇帝ネロとが顔を合わすことになるんだが、ネロの脳みそお花畑状態がなかなかにマイルドで楽しい。物語を通じあれこれ脇道にそれる事が多く本題はなんなの?と思うことの多い作品ではあるが、実際の所プリニウス狂言回しにしながら当時のローマ帝国とその周辺の、その一部でもより多く描こうとしているんだろうなあ。その分分かり難いっちゃあ分かり難いのだが、まあ楽しいことは楽しい。

 ■ニンジャ・バットマン(上)(下)/久正人

ニンジャバットマン 上巻 (ヒーローズコミックス)

ニンジャバットマン 上巻 (ヒーローズコミックス)

 
ニンジャバットマン 下 【完】(ヒーローズコミックス)

ニンジャバットマン 下 【完】(ヒーローズコミックス)

 

アニメ『ニンジャ・バットマン』のコミカライズ作品。正直アニメのほうはイマイチだったのだが、ほとんど同じ話の流れなのにもかかわらず、久正人が漫画化するとアラ不思議、これが「最初から久正人作品だったんじゃないのか?」と思わせる様な充実ぶりで、非常に楽しめた。なんかなあ、アニメはちょっと冷たい感じがしたんだよ。しかしコミックは久正人ならではの情感が込められていてそこがよかったのかもな。

■最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常(1)(2)/二宮敦人 (原作)、土岐蔦子 (漫画)

最後の秘境 東京藝大 1: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

最後の秘境 東京藝大 1: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

 
最後の秘境 東京藝大 2: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

最後の秘境 東京藝大 2: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

 

「東京藝大生はトンデモないひとたちばかり!?」という二宮敦人による実話読み物のコミカライズ。まあまあ楽しかったのではあるが芸術突き詰める人ってこんなもんじゃないの?としか思わなかったし、それを大仰に「この人たち変わってる!」と描いちゃうのは少々シラケたな。あと悪いんだが漫画担当者が絵にしろ物語にしろどうにも表現力不足で食い足りなさすぎる。エピソードそれぞれは面白かったし、特に音楽科の芸術科とは全く別なキツサというのはオレは初めて知ってこれはフムフムと読んでしまった。

 ヴィンランド・サガ(23)/幸村誠

ヴィンランド・サガ(23) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(23) (アフタヌーンKC)

  • 作者:幸村 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: コミック
 

例によって筋も人間関係もよく分からんまま惰性で読んでいるが、そろそろヴィンランドをどうにかするために動き出したのは何となく分かった。