サイバーパンクSF作家ウィリアム・ギブスン原作!クリストファー・ウォーケン、ウィレム・デフォー主演!…の超しょうもない映画『ニューローズ ホテル』

■ニューローズホテル (監督:アベルフェラーラ 1998年アメリカ映画)


この『ニューローズホテル』、まずあのサイバーパンクSF作家ウィリアム・ギブスン原作!と聞いてギブソン好きSF小説ファンとしては「うおおおお!?」と盛り上がるんですよ!さらに主演がクリストファー・ウォーケンウィレム・デフォー!それに絡むのがイタリアのホラー監督ダリオ・アルジェントの娘、アーシア・アルジェント!さらにさらに、共演がジョン・ルーリー坂本龍一!おまけにゲーム『ファイナル・ファンタジー』のイラストで有名な天野喜孝が映画初出演!いったいどんな凄いことになってんだ!?と興奮はいやがおうにも高まるではないですか!?
しかし作品評価を見ると、相当残念なことになっている、ということらしいんですね…。そりゃまあ1998年作で今まで何の噂にもなっていなかった、という部分からも推して知れるものではありますね…。しかーし!一人のギブソン好きSFファンとしては、内容がどうであろうと観なきゃアカン!ということで殆ど特攻隊状態でDVDレンタルして観ましたよ!…でまあ…結論から言うとやっぱり相当残念な出来でありましたね…。
原作は随分昔読んだから(短編集『クローム襲撃』収録。1987年刊、といいますから既に30年近く前ではないですか…)内容は忘れちゃってるんですが(それでもギブソン好きSFファンなのかよ!?)、映画のストーリー的には、近未来の東京を舞台に、二人の男が世界的バイオ企業の研究者を引き抜く策略を決行したばかりに、企業の私兵同士が命を奪い合う企業間戦争に巻き込まれる、というものなんですよね。しかしこう書いてみて気が付きましたが、これって組を抜ける幹部を巡って争われるヤクザ戦争を換骨奪胎しただけの話じゃねーか!?…まあ原作はこれを、巨大化した国際複合企業が超国家的存在となり、傭兵とハイテク兵器を駆使して戦争を繰り広げる、という未来像として描いたものだったのでしょう(よく覚えてないけど多分そんなところ)。
で、映画ではクリストファー・ウォーケンウィレム・デフォーが研究者引き抜きの山師となり、坂本龍一扮する企業役員の依頼で、天野喜孝扮する研究員を引き抜こうと、アーシア・アルジェント扮する娼婦に色仕掛けさせる、というものなんですね。しかし映画ではSFらしい描写はまずほとんど出てきません。しかも描かれるのはウォーケンとデフォーがホテルの部屋でずっとワァワァやってるだけ!そこにアーシア・アルジェントが出てきてクネクネしてるだけ!天野喜孝は盗撮映像とされる汚いビデオ映像に出て来るだけ!坂本龍一はふんぞり返っていつもの聞き取り難い鼻声で1分ぐらいモニョモニョ言ってるだけ!ジョン・ルーリーはどこに出てたかわかってない!なにしろ、世界を股にかけているように見せかけて、登場人物がほとんどホテルとホテルの部屋から出てこない、という凄まじい映画!
いやあ、こりゃいったい…。とか言いつつ、「クソ映画!」と吐いて捨てず、それなりに楽しもうと観ていました。結局、SF作品を題に採りながら、映画の本質的なテーマとなるのは、デフォーとアーシア・アルジェントとの道ならぬ恋、ということだったんだと思うんですよ。それを退廃的な雰囲気で描こうとしたのがこの映画だったんですね。まあ、それが成功していたかどうかは別ですが。
それと、ウィレム・デフォーが出ずっぱりで様々な表情を見せ、ロマンスに悩み、裸体をさらしベッドシーンもきっちり演じており、ある意味ウィレム・デフォー・ファンにとっては「デフォーのイメージビデオ」としてこれほど堪能できるものはないかもしれません。というわけでこの『ニューローズホテル』、ウィレム・デフォーを90分間舐めるように見つめていたいファン向けの作品だと言えるのかもしれません。

ニューローズ ホテル [DVD]

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クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

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