惜しくも終了、木葉功一『ディザインド』

■ディザインド(2) / 木葉功一

ディザインド(2) <完> (シリウスKC)

被害者を嬲るかのように行われる、最悪の猟奇連続殺人。真相を追う女刑事が事件の裏で目撃したのは、おぞましき「何者」かの影。その正体は、人外の“怪物”か、それとも“瀕死の少年”なのか!?物語は遂に核心へと向かう!!読むと血が滾(たぎ)る野獣派ハード・サスペンス、「虐殺連鎖シンクロニシティ」編、膨大な描き下ろしにて完結!!幻の初期傑作『カフェボヘミア』の後編を特別収録。

木葉功一は情念とバイオレンスに満ち溢れたドラマをマジック・リアリズム的手法で描き上げる非常に個性的な作家で、自分もこれまでリリースされた作品は余さず追いかけてきたつもりだ。ただどうも作家として不遇な扱いを受けている部分があり、連載打ち切り、休載などで物語半ばにして中断させられた作品も多い。この『ディザインド』は野獣のような体力と嗅覚で社会の闇にメスを入れるフリーランスのカメラマンを描いた作品だが、これもまた打ち切りの憂き目に遭い、単行本化に際して相当枚数の書下ろしが成されている。
今回の物語は全身麻痺状態の車椅子の少年と彼が殺人の夢を観るときに事件を起こす謎のシリアルキラーを追い、真犯人をつきとめるというものだが、そこは木葉功一、単なるクライムサスペンスではなく人間の深層心理にまでメスを入れた夢幻的な物語に仕上がっている。そして今回驚かされたのは木場のもう一本の未完の作品、『セツ』主人公の女刑事セツの登場があったことだ。それも端役というものではなく副主人公といってもいいほど出ずっぱりであり、この『ディザインド』2巻自体が『セツ』とのコラボレーションの如き味わいとなっているのだ。もちろん両作のファンとしては嬉しいが、事情を鑑みると複雑な心境でもある。
作家も作品も大いなるポテンシャルを秘めたものであり、これら両作品が再び日の目を見ることをいちファンとして願ってやまない。

ディザインド(2) <完> (シリウスKC)

ディザインド(2) <完> (シリウスKC)