■E2-E4 / Manuel Gottsching

- アーティスト: マニュエル・ゲッチング
- 出版社/メーカー: ディスク・ユニオン
- 発売日: 2006/08/25
- メディア: CD
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しかしこの間日記にて「長い長い長〜い音楽」なるエントリを書いたときに「これはやはり一度きちんと聴いておかなくてはなるまい」と思い購入、CD1枚1曲59:35のこの『E2-E4』と対決してみたというわけなんである。そしたらこれが噂に違わぬ素晴らしい出来でシャッポを脱いだオレなのであった。リメイク曲と極端に違うわけではないが、やはりこのクオリティの音を1981年に作っていた、という事実と、1時間みっちり『E2-E4』でっせ、という凄みがこのオリジナル・アルバムにはある。
音的にはミディアム・テンポの明るくキラキラしたループ音が延々と続き、ゆっくりと時間を経ながら別の音が加えられてゆく、というものだが、余計な展開をしないごくシンプルな反復音の生み出す愉悦と恍惚感、というのは、実はテクノやマニュエル・ゲッチングやジャーマン・プログレの発明したものではなく、アフリカの土俗音楽などでは大昔からあったもので、つまりは実にプリミティブな音楽であり、原初から人間はこういった音に対して官能するような仕組みを脳に持っていたと言う事が出来る。
しかし西欧世界における音楽は、バッハの平均律による呪縛から数世紀もがんじがらめにされてしまい、こういったプリミティブな音を低劣なものとして扱ってきてたか、またはまるで知らなかったのではないかと思う。それが近代になり古典主義的な音楽スタイルを批判・批評しそこから逸脱しようとする動きが出始め、シュトックハウゼン、ケージら現代音楽家が登場し、さらにライヒのミニマリズムに行き着く。ここに電子楽器の発達が結びつき、電子音楽として新し物好きのロック・ミュージシャンがこれを取り入れ、ジャーマン・プログレッシヴ・ロックからクラフトワークあたりを経てマニュエル・ゲッチングになったということではないのか。なんでドイツなのか、というとあいつら工業製品好きそうだからってことにしておこう。要するに、古典音楽への批判・批評がグルッと回って音楽のプリミティヴィズムに行き着いたという事になるのではないか。
一方黒人音楽である。19世紀半ばアフリカからアメリカに大量に拉致られてきた黒人奴隷がネイティブ・サウンドを奏で出した時に、白人達がびっくらこいて「黒人音楽スゲエ」となったのがブルースやジャズ、R&Bだったのだろう。しかしそれは"黒人音楽の発見"なのではなく、人間の原初的な部分にあるリズムの"再発見"だったのではないかと思う。つまり、黒人音楽が特別だったのではなく、それは実は人間にとって普遍的な音楽だからこそ、これだけ受け入れられたのではないか。そしてその後の黒人音楽はアフロ・アフリカン的なエトスが白人音楽と折衷される形で発展してゆく。しかしここでも電子音楽の登場により、よりディープでアグレッシブなリズムを獲得することに成功し、Pファンクやヒップホップ、さらにハウス・ミュージック、そしてテクノへと発展したのだろう。
ここでテクノDJやテクノミュージック・リスナーがマニュエル・ゲッチングと出会ったときに、「これってテクノだぜ!」と絶叫したのは、「根っこが同じものが時間と空間を大きく遠回りして最終的に同じ形となって再会した」ことを感じていたからなのではないのか。マニュエル・ゲッチングの『E2-E4』を聴いてそんなことをオレは思った。
■New Age Of Earth / Manuel Gottsching

- アーティスト: マニュエル・ゲッチング
- 出版社/メーカー: ディウレコード
- 発売日: 2008/11/07
- メディア: CD
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