70年代後期から始まったパンク・ムーブメントが終息した後に訪れたニュー・ウェーブ・ムーブメントは、パンク・ミュージックが破壊した既存の音楽テーゼを再構築する形で興された。当時20代だったオレもニュー・ウェーブ・ロックの洗礼を受けまくった口で、ラフ・トレード、ファクトリー、4AD、チェリー・レッドなど様々なインディペンデント・レーベルの音源を聴き漁ったものである。しかし一口に"ニュー・ウェーブ"と言っても、その中の音楽的傾向はエレ・ポップやゴシック、スカやネオ・アコースティック等多岐に渡る。オレもあれこれ聴いていたが、その中でもとりわけ異彩を放っていたのはノイズ・ミュージックとかインダストリアル・ミュージックと呼ばれる実験音楽的な音源だった。
インダストリアル・ミュージックとは「工業生産される大衆音楽」へのアンチテーゼとして命名されたジャンルであるらしいが、多くは電子楽器が用いられ、テープ録音されたノイズや環境音をコラージュ・モンタージュし、ひたすら非人間的で機械的なリズムやメロディを生み出していた音楽だった。当時上京したてのオレは、東京の高層ビルやどこまでも延びるハイウェイを眺めながら、ウォークマンでこれらインダストリアル・ミュージックを大音量で聴いていたのを覚えている。
今回はその当時オレが聴いていたインダストリアル・ミュージック系の音源を幾つか紹介するが、あくまでオレがよく聴いていていた音なので、インダストリアル・ミュージックを網羅的に紹介しているものではない。また、それってインダストリアル・ミュージックじゃないんじゃない?というのもあるかと思うが、その辺は気分ということで見逃しておいてほしい。
◆Cabaret Voltaire (キャバレー・ヴォルテール)
インダストリアル・ミュージックで最も気に入っていたのがこのキャバレー・ヴォルテール。実はライブ・アルバム『Hi!』になった新宿ツバキハウスのライブ、オレ観に行ってました。ダダイズムがどうとかイギリス工業都市シェフィールドで生まれた工業音楽とかいろいろ言われてはいるが、ノイズをここまでドライブ感溢れる音に仕上げた才能は、後のテクノ・ミュージックに繋がる部分が多いと思う。
■"Eastern Mantra" by Cabaret Voltaire (1980)
- アーティスト: Cabaret Voltaire
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- 発売日: 2000/05/23
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◆throbbing gristle (スロッビング・グリッスル)
死とナチズムの匂いを濃厚に漂わせた曲タイトル、暴力的で呪術的なライブ・パフォーマンス、このスロッビング・グリッスルは分かりやすく言えばインダストリアル・ミュージックのオカルト担当ということが出来る…なんて書くとファンの人に怒られるか。ひたすら鬱展開の暗黒ノイズはインダストリアル・ミュージックの帝王と言っていいだろう。ステージ・パフォーマンスの過激さも伝説となっており、Vo.のジェネシス・P・オリッジは唄いながらチンコに針を刺していくなんてパフォーマンスをやった挙げ句病院送りになったという。ちなみにバンド名は「チンコビンビン」という意味。ところで下のビデオ・クリップの『discipline』だが、これって「修行するぞ修行するぞ思いっきりハードに修行するぞ」って意味なのか?
■throbbing gristle - discipline
- アーティスト: Throbbing Gristle
- 出版社/メーカー: Mute U.S.
- 発売日: 1993/12/02
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◆Psychic TV (サイキックTV)
サイキックTVはスロッビング・グリッスル分裂後に出来たユニット。実は音的にはそれほど好きではなかったのだが、オカルト度は100%増しになっており、昔出たアルバムには「人間の大腿骨を使って作った音楽」なんてのも収められていた。ここではサイキックTVの演奏曲ではなく、メンバーのジェネシス・P・オリッジが関わったビデオ作品『Thank You Dad / Jim Jones』を紹介。そう、あのガイアナ寺院のジム・ジョ−ンズの演説映像などをコラージュして製作された作品なのである。映像は汚いが貴重なものだと思う。「Part 4」あたりでサイキックTVの音が流れている。詳しくはここで。
■Thank You Dad / Jim Jones - Part 1 of 4
■Thank You Dad / Jim Jones - Part 4 of 4
Force the Hand of Chance (Reis) (Dig)
- アーティスト: Psychic TV
- 出版社/メーカー: Some Bizzare
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◆The Flying Lizards(フライング・リザーズ)
こちらはもうちょっと可愛く、食器や段ボールや楽器を叩いた音で音楽作っちゃいました〜というフライング・リザーズ。インダストリアル・ミュージックというのではなく、まさに実験音楽的な音のだが、実はこのフライング・リザーズの中の人であるデヴィッド・カニンガムが、全く楽器が弾けなかったから、というのがその理由であった。しかし楽器弾けなくてもここまで面白い音楽が作れるということが、当時のニュー・ウェ−ブ・ファンの度肝を抜き、そして喝采を得たのであった。
■Money (That's What I Want) The Flying Lizards
- アーティスト: フライング・リザーズ
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◆Einstürzende Neubauten(アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン)
もっとノイズを!ということで結成された(?)ドイツのアインシュテュルツェンデ・ノイバウテン。バンド名は「崩壊する現代建築」という意味らしい。ドリルやハンマーなどの建設器機を使用した無機的で暴力的な音はライブでも再現され、ライブ会場を破壊して出入り禁止になったという伝説まであるが真偽の程は定かではない。
■Einsturzende Neubauten - early live clip
- アーティスト: アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン
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◆Suicide (スーサイド)
NYを活動拠点としたスーサイドはボーカル担当とリズム・ボックス/キーボード担当の二人だけのユニットであり、インダストリアル・ミュージックというのとはちょっと違うが、無機的で単調な音の繰り返しの中から生まれるニヒリズム、といった点で共通しているように思う。あと妙なロカビリー風味が変でいい。初期の頃はカセット・デッキの音だけ流してボーカルがそれに乗って床のた打ち回り絶叫しているだけのユニットだったという話もある。
■Suicide - Ghost Rider
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◆Deutsch-Amerikanische Freundschaft (ドイチュ-アメリカニシェ・フロイントシャフト)
通称D.A.F.。この長ったらしい名前は「独米友好」という意味だが、旧東ドイツの独ソ友好協会とドイツ赤軍(RAF)のもじりらしい。ぶっといエレクトロ・ビートに乗ってドイツ語ががなりたてられる様は実にナチス・ドイツを髣髴させてくれて楽しいが、ネオナチとかそういうのでは全くありません。ビデオ・クリップのタイトルは「ムッソリーニで踊れ!」という意味。いやだからネオナチじゃないんだってば。
■DAF "Der Mussolini" (Tanz den Mussolini)
Die Kleinen Und Die Bosen (Reis)
- アーティスト: Daf
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さて、こんなインダストリアル・ミュージックを自分でも作ってみたいという人の為に、建設機械音を手軽に組み立てて音楽に出来るサイトがぱせよさんのところに紹介されていたのでやってみたい方はドウゾ。
その名も『BUILDUP!』。3Kと名高い建設業界のイメージアップを狙ったのか、作っているのは日本建設業団体連合会。キャッチフレーズは『建てノリ』である。頑張ってんなぁ、日建連‥‥。
建設事例の紹介では、共同溝やらボスポラス海峡横断鉄道トンネルやら首都圏外郭放水路など、普段は見ることのできない巨大プロジェクト内部の写真が公開されている。やっているのが大手ゼネコン団体だけあって、スケールがデカい。立坑すげぇ。贅沢を言えば、もっと大きな画像で見たい。
他に現場作業員のブログとかいろいろあるんだが、その中に建設機械っぽいイメージのサンプリング音を組み合わせて、オリジナルサウンドを作ろうというコンテンツがあったので、私も調子に乗って作ってみた。
■とは云ふもの丶お前ではなし/音楽の本能