2013年:今年よく聴いた音楽

■The Next Day / David Bowie

ザ・ネクスト・デイ デラックス・エディション(完全生産限定盤)

ザ・ネクスト・デイ デラックス・エディション(完全生産限定盤)

個人的に今年一番盛り上がったのはデヴィッド・ボウイのニュー・アルバムの発表でしょう。前作から10年のブランク、66歳という年齢、それらを全く感じさせないどころか、そんな事実をきれいさっぱり忘れさせてしまうような、痛快なロック・アルバムでした。

そこから続くボウイの曲の数々は、10年のブランクなぞ無かったに等しい、さらに言ってしまえばここ最近のボウイのキャリアの中でもダントツと言っていい程の高いクオリティを誇る名曲・傑作曲が並び、そしてそれらはきっちりとボウイらしいアグレッシヴさで彩られているのだ。66歳でこのアグレッシヴさ。年齢なんか感じさせるどころか、昔から感じていたことだけれども「この人はやはり人を超越した何者かであるのかもしれない」とさえ思わしめましたよ、ええ、ええ。
デヴィッド・ボウイ会心の復活アルバム『The Next Day』!

■The Lost Sirens / New Order

Lost Sirens

Lost Sirens

ニュー・オーダーのニュー・アルバムが出たことも本当に嬉しかった。とはいってもこれは2005年に発表された『WAITING FOR THE SIREN'S CALL』におけるレコーディング・セッションのアウトテイク集なんですが、アウトテイク集とは全く思えない粒揃いの曲ばかりだった。

そしてこの『The Lost Sirens』、アウトテイク集なんていうバックグラウンドがありながら、地味さも未完成さも微塵もない、恐ろしく出来の良い作品として仕上がっているのだ。いや、個々の作品の完成度は今まで通りのNew Orderなんだが、並べられた楽曲のバランスがいいのだろう、さらに全8曲という短さも功を奏していて、トータルとして聴くと実に勢いのある親しみやすいアルバムとして聴けるのだ。しかも『WAITING FOR THE SIREN'S CALL』のアウトテイク集にもかかわらず、こちらのほうが出来がいいとさえ思えるぐらいだ。
New Orderが新譜発表!アウトテイク集とは思えないほどの高水準アルバム!『The Lost Sirens』

■Live at Bestival 2012 / New Order

Live at Bestival 2012 [輸入盤CD] (SBESTCD60)

Live at Bestival 2012 [輸入盤CD] (SBESTCD60)

そのニュー・オーダーのライブ・アルバムが発売され、しかもそれがとんでもなく高いクオリティだったことにも驚かされました。

ニュー・オーダーのライブ・アルバムが発売された。これがもう、ジョイ・ディビジョンからのファンにとっては歓喜感涙の出来で、というのもニュー・オーダーのヒット曲のみならずジョイ・ディビジョン時代の名曲も3曲プレイされているからだ。このライブは2012年9月8日に行われたUKの大型フェス【BESTIVAL 2012】で5万人の聴衆の前でプレイした様子を収めたもの。ニュー・オーダーのメンツはバーナード・サムナー、スティーブ・モリス、ジリアン・ギルバートのオリジナルメンバーにバッド・ルーテナントのトム・チャップマンが参加。残念ながらピーター・フックの名前はない。収録曲は全13曲、内容はプレイリストを見てもらうとして、この中でジョイ・ディビジョン時代のカヴァー「Isolation」「Transmission」「Love Will Tear Us Apart」が演奏されている。
New Orderのライブアルバム「Live At Bestival 2012」が熱い!凄い!

■Lost Tapes / CAN

Lost Tapes

Lost Tapes

名前だけは知っていたんですが、これまで全く聴いたことの無かったドイツの伝説的なロック・バンド、カンのアウトテイク集を聴いて、あまりの面白さにびっくりしてしまいました。

で、3枚組のこのアルバム(そもそもいきなり3枚組から入るっていうのもなんだが)、聴き通してみると、これがなんと、かな〜り面白かったんですよ!CANほども歴史が長く一部かもしれないが有名なバンドに対して、「これはこういう音だ!」と言い切っちゃうのも僭越だしそもそも言えるほど自分の音楽的理解力が高いかどうか疑問なんですが、それでも自分なりにCANの音に接してみて思ったことは、「これパンク以降のオルタナティヴ/ニューウェーブより全然早くその手の音を、しかもずっと超絶的な技巧でやってたバンドだったんじゃん!」ということでしたね。もうね、パンク/オルタナティヴ/ニューウェーブなどのポスト・ロックで聴いていた音の源流が、手に取るように聴こえてくるんですよ。逆に言えば、あれらの音って、CANを模倣することから始まったんじゃ?とさえ思ったぐらいだったんですよ。
CANのことは何にも知らなかったから最初に『Lost Tapes』を聴いてみた

■Desertshore / The Final Report // X-TG

Desertshore / The Final Report

Desertshore / The Final Report

オレがこの歳まで聴いてきた音楽の中でも、暗黒の中の暗黒、ダークサイドの極北と言っても過言ではないインダストリアル・ノイズ・バンド、スロッビング・グリッスルが最後のアルバムを出しました。いやまたこれがまた血も凍るような暗黒さで…。

音的にはまぎれもなくTGだが、エレクトロニクス的な進歩もあるせいか、昨今のインダストリアル/ドローン系の音と比べ遜色がないどころか桁違いの凄味と深みを見せる。もはや凶悪と言っていい。その深淵を覗くかのような暗黒ぶりはやはりTGがインダストリアル・ミュージックの中心部であり出発点であったということを再認識させてくれた。その年季を積み過ぎたドス黒さは既に付喪神と化しさらに悪霊やら動物霊やらが憑いて暗闇でウケケケケと哄笑を上げているようですらある。しかし…しかしだ。かつてTGを頻繁に聴いていた20代の頃、「これ以上こんな真っ暗な音を聴き続けるのはヤダ」と心底思ったように、このX-TGの2枚組を聴き続けるのは正直気分が鬱々として来て相当キツい。逆に言えばそれだけ魂をどこかに持ち去られてしまうかのような音だということが出来るのだが、どちらにしろ、現在このX-TGの2枚組は自分の中で封印中である。それにしても30年以上こんな音を出し続けてきたTGメンバーのメンタリティにもいろんな意味で恐れ入るが。
そこは底知れぬ奈落、光一つ差さない深淵〜スロッビング・グリッスルの別ユニット「X-TG」と「カーター・トゥッティ・ヴォイド」

エレクトロニック・ミュージック篇は明日やります。