いがらしみきおのド田舎ファンタジー完結篇である。登場人物すべてが田舎モノの強情さと融通の利かなさ、狭い共同体準拠の濃厚で一筋縄ではいかない論理に基づいた行動規範を持った人々ばかりであり、さらにヤクザだのチンピラだの前科者だの都会生活逸脱者だのホームレスだの、しまいには自称神様や超能力少年まで登場し、いわゆる《まつろわぬ民》が"過疎の村"という特殊なような日本の一つの点景のような舞台でありそうでなさそうな奇妙な物語を繰り広げる、といったコミックである。
主人公であり狂言回しである都会から逃げ出してきた青年以外、誰一人何を考えてんのか分からない、本性がはっきりしない、という恐ろしくねじくれた物語でもある。しかし人の本質や本性というのはひとつではなく、相矛盾する様々な事象の複合体であるととらえるなら、この物語の登場人物たちは、実は非常にリアリズム溢れる性格を持っているということもできるかもしれない。
このような癖のある性格の登場人物たちばかりを登場させ、4巻という長編にまとめ上げたいがらしという漫画家の異能ぶりがまず評価に値する作品だと思う。そして人間それ自体を卑下するのでもなく単純に人間賛歌にまとめ上げるわけでもなく、とりあえずハッピーエンドな最終回を読了した後にもなにか腹にドロリと違和感を残してしまうのも、かつて4コマ漫画で破壊と狂気の限りを尽くしたいがらしらしい独特さである。