中春こまわり君/山上たつひこ

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かつて小学生警官として世間をパニックに陥れていた変態少年、"がきデカ"ことこまわり君が中年になって帰ってきた。40代に手の届いたこまわり君はスーツ姿のサラリーマンであり、一軒家に住んで奥さんも子供もいたりする。会社や家庭、その他諸々の人間関係に疲れ切り、焼き鳥屋で酒をあおっては溜め息をつくこまわり君。スーパー・スラップスティック・ギャグをマシンガンのように繰り出していたあのマセガキはもういない・・・と思いきや、おおお!突然イボイノシシに変身しドスケベなセリフを連呼しているではないか!?あのド変態ぶりはまだ健在だった!?ただちょっと、現実の重みが肩にのしかかる歳になってしまったんだね・・・。
がきデカ』は子供時代のオレにとって衝撃的なギャグマンガであった。オレという人間がいまだバカアホマヌケお前のカーちゃんデーベーソな人間であるとしたら、それはひとえに心の中にこまわり君が住んでいるからであると言っても過言ではない。『がきデカ』のギャグのあの破壊力、シュールさ、ナンセンスぶりはまさにロケンロールなアナーキズムに満ちていた。こまわり君同様いい歳こいたセコイ中年になってしまったオレだが、下品とおバカのしょーもない下らなさを愛する熱い(?)気持ちは、今でも決して変わりはしない。まあ、かなーり、くたびれてはきているけどな・・・。
『中春〜』のこまわり君は、昔ながらのギャグを連発しながらも、現実の苦味も同様に知っている大人になった。劇画調に描かれるシビアな現実と、それを突然引っ繰り返す破天荒なギャグ。この対比が少年時代の『がきデカ』にはない深みと渋みを感じさせる。確かに同窓会的な趣もあるとはいえ、決してそれだけにはとどまらない新しさがこの『中春こまわり君』にはあると思う。