「戦争のある世界―ああでもなくこうでもなく 4 」は1997年から雑誌「広告批評」で連載されている時評をまとめた「ああでもなくこうでもなく」の第4巻。時系列でいえば2002年5月から2004年4月までの時評が収められている。今回は、前回3巻の時期に起こったアメリカの同時多発テロを受けて変容してゆく日本について書かれていますが、橋本治が書くと政策がどうとか政治がどうとか言うレベルで時評なんかしない。そもそも同時多発テロじたい「あれはアメリカの問題だろ、興味ないな」と言っちゃう人なんだ。そして「戦争は国家同士が自国の利益の為に行う外交の形態の一種(クラウゼヴィッツ)ではあるが、第2次世界大戦以降近代国家では国家の成熟と共にその戦争という手段自体が出来辛いものになっていった、その後に残されているのは内乱かテロだけである」すなわち「テロに対する戦争、というのは語義矛盾である」と解く。だからこそ「アメリカ、おかしいんじゃねーか?」と言い、それに追従する日本を「何考えてんだ?」と憂慮する。
また戦争以外でも最近の日本の少年犯罪を「大人がおかしくなってるのに子供だけがまともでいられるわけないじゃないか」と考察する。橋本の文章はいつもどんなことも、起こったことはどこかで繋がっている、として、怖ろしく過去まで社会や人の生活のあり方を掘り下げてゆくことが多い。最近の著作「上司は思いつきでものを言う」も儒教思想まで持ち出されている。