フェイブルマンズ (監督:スティーブン・スピルバーグ 2022年アメリカ映画)
スピルバーグ自伝映画ってェ触れ込みの『フェイブルマンズ』、観たんですがね、なにしろスピルバーグ作品だし評判も上々だし大変愉しみにして観に行ったんですが、これがなんとびっくり、自分でも驚いちゃうほど心に刺さんなくてねえ。
要するにこのオハナシ、環境にも才能にも恵まれ親の愛情もたっぷり注がれ何不自由なく生活していたプチブルのオコチャマがそのまますくすくと育って大好きなシュミを活かした仕事します!ってただそれだけの話じゃないか。実家が太いんで有名大学も出られて有名企業にも就職できました人生イージーモード!って話と何が違うんだ。ひねりもなんにもねえな。学校のイジメ?両親の離婚?学校でイジメに遭ったってすぐカノジョできちゃうし両親の離婚があったって高給取りの父親の庇護のもと「大好きなシュミの仕事」を探し続けられるしなんだって結果オーライじゃないか。
アメリカが世界の覇者として君臨しカネもモノも潤沢だった50年代に何不自由ない【中流家庭】の子供として生まれ育ち、技術屋として高い発想力を持ちそれに見合ったたっぷりの給料を貰ってる父による安定した生活と、世が世ならプロとして活躍していた芸術肌の母から受け継いだ豊かな才能に恵まれ、子供の頃からなにしろシュミ!シュミシュミシュミ!とばかりに生きていたオコチャマが父親から授かった潤沢な資金でシュミを押し広げ母親から授かった感性でシュミを純化させ、要するに牌は全部揃ってるんで当然このまま役満ですよ未来は明るく輝く希望に満ちていますよオレってラッキー!ってことだろ。いったい何の意外性があるんだ?自伝だっていうからまあ実際そうだったんでしょうねえと納得するしかないがこれがフィクションだったらふざけんじゃねえぞコラ、って思っちゃうよな。
映画の出来、はまあいいんだろうよ、だってスピルバーグだもん、つまんなく作るはずがないだろ、確かにスルスル観られたよ、軽快だったよ、巧かったよ、1本の映画として最後まで興味を持たせつつ全く退屈することなく観ることができたよ、才能だよ、敬服だよ、でもなあ、オレは途中から辛くなっちゃったんだよ、そしてこう思っちゃったんだよ、オレもなあ、こんな風だったら、こんな恵まれた家庭に生まれ育ってたら、世界的な映画監督とまでは言わないけど、まあまあ宇宙飛行士ぐらいにはなってたんじゃね?ぐらいのことをな。
ああ、オレとスピルバーグの共通点は映画好きって事だけかと思ってたが、この映画観てもう一つ共通点を見つけたよ、オレはスピルバーグと同じ離婚家庭だったよ、でも贔屓目に見て、なにもかもが最低だったよ、単なる貧困母子家庭だったよ、オレのクソ親は見事にオレの未来を破壊してくれたよ、あとついでに父親も母親もろくでもない気質的偏向を持っててその両方が見事に遺伝してくれたよ、ホントに素晴らしい血筋だよ、でもとりあえず世をすねることなくなんとかこの歳まで真っ当な社会人として生きてきたよ、それだけでも偉いなって自分を時々褒めてあげてるよ。
即ちここで書いたことは全て妬み嫉み恨み辛みの「4み」が揃い踏みとなりグジュグジュと発酵して腐臭を放つ個人的ルサンチマンだ。こんなもん読ませてすまんな。でもなあ、オレにはちょっと、この映画が堪え難かったんだよ。
【物語】初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になった少年サミー・フェイブルマンは、母親から8ミリカメラをプレゼントされる。家族や仲間たちと過ごす日々のなか、人生の一瞬一瞬を探求し、夢を追い求めていくサミー。母親はそんな彼の夢を支えてくれるが、父親はその夢を単なる趣味としか見なさない。サミーはそんな両親の間で葛藤しながら、さまざまな人々との出会いを通じて成長していく。