香港に迫る核爆発の危機!/映画『バーニング・ダウン 爆発都市』

バーニング・ダウン 爆発都市 (監督:ハーマン・ヤウ 2020年香港・中国映画)

優秀な爆発物処理隊員でありながら、事故により現場復帰を拒まれた男が、テロリストとなって復讐を企てるが!?という2020年の香港・中国映画です。「迫る核爆弾!」とか「総製作費44億円!」とか「本国興行収入230億円突破!」とか賑やかな宣伝文句が並んでいて、おおこりゃド派手そうじゃわい、と思い観に行きました。

主演は香港アクションの大スター、アンディ・ラウ、共演に『奪命金』のラウ・チンワン、『-悟空伝-』のニー・ニー。監督は『イップ・マン 最終章』のハーマン・ヤウ。なおこの作品は2017年製作の『SHOCK WAVE ショック ウェイブ 爆弾処理班』のリブート作品として製作されているのだそうです。

爆弾処理班で数々の事件を解決してきたフォンは、爆発に巻き込まれ左足を失ってしまう。義足とは思えないほど身体機能が回復しながらも、上層部はフォンの現場復帰を認めず、仕事一筋で生きて来たフォンは自暴自棄になり、警察を辞めてしまう。姿をくらませたフォンが発見されたのは、テロ組織「復生会」によるホテル爆破事件の現場だった。重体の状態で発見されたフォンは容疑者として病院で尋問を受けるが、爆発の影響により過去の記憶を失っていた。

バーニング・ダウン 爆発都市 : 作品情報 - 映画.com

なにしろもう初っ端から爆発!爆発!爆発!の連続で、人はぶっ飛び建物は壊れ瓦礫と爆炎が画面を覆い尽くします。「爆発は正義」と思っているオレのようなボンクラ映画ファンは恍惚として画面に見入っちゃうこと必至でしょう。そしてこの作品、元爆発物処理隊員が爆弾テロを企てるテロリストの一員になっちゃう、というお話ですから、爆弾処理の緊張と爆弾テロの恐怖の両方が楽しめる作りになっているんですね。

もう一つの見所はアンディ・ラウの繰り出すアクションです。テロ犯として警察に追われる身となった主人公フォン(アンディ・ラウ)と警官隊との、香港の街を縦横無尽に駆け巡り描き出されるアクションが、非常にスピーディーかつ緊迫感に溢れているんですね。しかもフォンは事故により片足が義足という設定になっていて、このハンデとハンデを逆手に取ったアクションが面白いんです。アンディ・ラウ、今年60歳なのだそうですが、精悍なルックスと切れ味のいいアクションはまるで年齢を感じさせません。

物語は少々錯綜気味です。一見単純そうに思わせて実は2重3重に捻りが加えられているのですが、逆にこの一筋縄にいかないシナリオが物語から疾走感を奪っています。捻り過ぎたためにリアリティが希薄で展開にちぐはぐさを感じさせるんですよ。もとより「闇落ちした爆発物処理隊員」という設定自体にやりきれなさが漂っていて、ここまで暗くしなくてもなあ、と思わされました。このどろどろした情念の発露は作品全体を情緒過多にしてしまっており、この辺りは苦手だったなあ。

とはいえ、アンディ・ラウのいぶし銀の魅力をスクリーンで堪能できるのは楽しかったし、ラウ・チンワンとの男同士の熱い想いがぶつかる様にも惚れ惚れさせられましたね。ヒロインを演じたニー・ニーのクールさも十分に魅力的でした。大爆破の光景を次々と描くVFXは極稀に玩具っぽいシーンもありましたが、全体的には大迫力でありました。