航空ミステリ『座席ナンバー7Aの恐怖』を読んだ

■座席ナンバー7Aの恐怖/セバスチャン・フィツェック

座席ナンバー7Aの恐怖

上空数千メートルを飛ぶ旅客機。そこに乗り込んだ飛行機恐怖症の精神科医クリューガー。彼を見舞ったのは想像を絶する悪夢だった。誘拐された娘を救いたければ、この飛行機を墜落させろ。それが犯人の要求だった。恐怖と苦悩にさいなまれるクリューガー。乗客乗員と娘の命を守るには、着陸までに無数の謎を解明しなくてはならない。ドイツでベストセラーを記録したタイムリミット航空サスペンス。

娘の出産に立ち会うためブエノスアイレスからベルリンに向かう旅客機に乗り込んだ一人の男に謎の電話が掛かる。「娘を誘拐した、助けたければ旅客機を墜落させろ」と。

ここから始まるノンストップ・サスペンス・スリラーがこの作品だ。旅客機を舞台としたサスペンス・スリラーといえばリーアム・ニーソン主演の映画『フライト・ゲーム』をオレは思い出したが、この『座席ナンバー7Aの恐怖』でも映画と同様に「客室内に犯人ないし協力者がいるのではないか?」というミステリーが描かれ、それと同時に誘拐された娘の行方を追う主人公の協力者のサスペンスも進行することになる。

犯人の要求する「旅客機の墜落」を主人公がどのようにやらねばならないのか?というその方法も一ひねりされており、決して無理と言えないこともないとは思わせる。しかし、最後までどんでんがえしに継ぐどんでん返しが続く飽きさせないエンターテインメント作品ではあるが、逆にどんでん返され続ける物語はどんどんリアリティが希薄化していかないか。

犯人の動機や犯罪計画やその実行の方法も実のところ突飛だし無理を感じさせるものがあり、それらは巧くまとめられているが極端すぎるよなあ、と微妙に「丸め込まれた感」がしてしまう。登場人物全員の造形もどうにもクセがあり、なんだか誰も好きになれないし感情移入し難い。そんなこんなで悪くは無いがすっきりしない読後感だったな。

座席ナンバー7Aの恐怖

座席ナンバー7Aの恐怖