最近ダラ観した韓国映画などなど

『声もなく』

声もなく (監督:ホン・ウィジョン 2020年韓国映画

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ヤクザから依頼される死体処理業を営む口のきけない青年テインと誘拐された11歳の少女チョヒとのねじくれた情愛を描く韓国サスペンス。主演は『バーニング 劇場版』のユ・アインとTVドラマ『梨泰院クラス』のユ・ジェミョン。なにより舞台となる田舎町の抜けるような青空と緑萌える田園地帯という眩しく豊かな情景と、そこで進行する陰惨な死体処理、それを請け負うテインの純朴さ、少女チョヒの可憐さ、というコントラストの激しさがひたすら目に焼き付く物語だ。テインは口がきけないだけでなく頭も少々弱く、死体処理業が犯罪だという事を意識していない。彼は単なる社会的弱者であり貧困生活の糊口を凌ぐ為に最底辺の仕事をこなしているだけなのだ。そんな彼が預かることとなった誘拐被害者のチョヒは、生来心根の優しいテインといつしか心を通わせるようになってゆくが、しかしそれを意識していようといまいと、犯罪者と被害者という立場は決して変わることは無いのだ。ここには善悪とは何か、良心とは、倫理とは何かという問題が横たわっている。次第に最悪の状況へと突き進んでゆく物語はやるせなくそして残酷だ。ユ・アイン演じるテインの、いつも困り果てどうしていいのか分からないという表情がたまらなく切ない。

ドアロック(監督:イ・グォン 2018年韓国映画

部屋の中に誰かいる……一人暮らし女性を恐怖のどん底に陥れる韓国サスペンススリラー映画『ドアロック』観たけど滅茶苦茶怖いじゃないですかッ?!変態邪悪ストーカーの話だけど韓国映画なんで結構エグい猟奇に舵を切っていて途中で胃が痛くなった……。男のオレでもこれだけ怖かったんだから女子が観たら阿鼻叫喚なんじゃないのかコレ!?変態邪悪ストーカーだから怖い上に気持ち悪いんだよ!?霊とか邪神とか悪魔とかが出てくるホラーはいっぱいあるけどやっぱり怖いのは人間だよなッ!そう、本当に怖いのはベッドの下の全裸中年男性だよッ!最近観たホラー映画にも立て続けに全裸中年男性が出てきたのでこれからはゾンビホラー並みに全裸中年男性ホラーが作られて一世を風靡するんじゃないかとオレは予言するね!(当たらない)

時間回廊の殺人(監督:イム・デウン 2017年韓国映画

家の中にいる謎の存在により家族を殺され子供をさらわれ、無罪にもかかわらず30年の懲役に処せられた女が、仮釈放後自分の家で再び謎の存在と対峙する、というホラー作品。いやこれはよくできていた。中盤まで『シャイニング』や『ポルターガイスト』のような幽霊屋敷ホラーとして展開してゆくが、後半「時間」を巡るSF的な展開が持ち込まれ、結果的にユニークなSFホラー作品として完成しているのである。過去と現在が交錯しながら進んでゆく物語は十分にミステリアスであり、描かれる母親の強烈な愛も心に強く訴えかけるものがある。説明不足だったり疑問点が残る部分もあるが、全体的なテイストは決して悪くない。正直よくこんなシナリオを生み出したものだなと感心した。

テロ、ライブ(監督:キム・ビョンウ 2013年韓国映画

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  • ハ・ジョンウ
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爆破テロ勃発時に犯人から電話を受けていた放送中のラジオアナウンサーが、犯人との電話を独占生中継し視聴率を上げようと画策するが、事態は思わぬ方向に動いてゆく、というパニック・サスペンス。主演にハ・ジョンウ、監督は『PMC ザ・バンカー』のキム・ビョンウ。テロについての物語ではあるがそこに主人公アナウンサーの野心と打算が絡み、テロ犯の悲痛な過去が明かされるなど、単純な善悪の問題にとどまらない複雑なシナリオと、それを殆ど放送室内のみで展開させるシンプル極まりない構成と、さらに全てがリアルタイムで進行してゆく編集が功を奏し、非常に緊張感溢れる作品となっている。そして物語の本質にあるのは、実に韓国らしい、政府と政府首脳に対する強烈な不信であり怒りであったりするのだ。

殺人の疑惑 (監督:クク・ドンソク 2013年韓国映画

【ネタバレあり】自分の父が時効寸前の誘拐殺人事件の犯人ではないか、と疑い始めた娘の物語。実際に起こった事件に絡めているそうだが作品自体は完全なフィクションだろう。何より「父を疑う理由」が「父の声が録音された犯人の声に似ている」「犯行声明文と同じ文章を過去に書かせた」程度で、娘も警察側もそればかりに拘っており、それよりも事件当日の行動を掘り起こすとか動機を探るほうが先だろうが何もやってない部分で既に白けた。劇中父親を脅迫する怪しげな男が登場しミスリードを促すが、彼の脅迫理由は実は「誘拐殺人」ではなく「産婦人科からの嬰児誘拐」であり、物語最後に誘拐殺人の嫌疑を晴らされ時効となった父親が高笑いしたのは、実は「誘拐殺人」の時効ではなく「嬰児誘拐」の時効に笑ったのではないのか。だからこそ誘拐して育てた娘(主人公)に「これからは親子として上手くいく!」と言ったのではないか。どちらにしろ映画としては演出が酷く主演女優が大根で安価な昼ドラレベルといった印象。