デヴィッド・ボウイ『世界を売った男』の別名Mixアルバム『Metrobolist』

Metrobolist (AKA The Man Who Sold The World) [2020 Mix] / David Bowie

Metrobolist (AKA.. -Digi-

このアルバム『Metrobolist (AKA The Man Who Sold The World)』は「(AKA The Man Who Sold The World)」とタイトルにあるように、その内容は『スペース・オディティ』に続き1970年にリリースされたボウイの3枚目のアルバム『世界を売った男』である。では『Metrobolist』とかこのジャケットはナニ?と思われるだろうが、そこにはいろいろややこしい理由がある。

まずタイトル『Metrobolist』は『The Man Who Sold The World』の最初に予定されていたアルバムタイトルであり、アルバムジャケットにしてもアメリカで先行発売した際のものだった。しかしある問題により1971年にイギリスでリリースされた際に現行で見ることの出来るドレス姿のボウイ写真が使われることになった。”ある問題”とはアルバムジャケットが精神病院に入院していたボウイの兄を揶揄するもの、とWikipediaには書かれているが*1、オレは単に「”ドレス姿の男”を嫌ったアメリカのレコード会社の判断」のような気もする。

ちなみに『世界を売った男』のアルバムジャケットは3種類存在する。まずこの『Metrobolist』のジャケット、次に現行発売されているドレス姿のボウイのジャケット。

それとは別に、「ドレス姿バージョン」が廃盤となりその後再リリースした際のジャケット。実はオレの持っている日本版LPレコードはこのジャケットのものである。

とまあそういう経緯のあるアルバムなのだが、今回紹介する『Metrobolist (AKA The Man Who Sold The World)』は2020年に『世界を売った男』発売50周年を記念して、トニー・ヴィスコンティがニューミックスを施しオリジナルジャケットを復刻して発売したものとなるのだ(やっぱり書いていてややこしい)。

さて今回のトニー・ヴィスコンティによる[2020 Mix]は前回紹介した『Space Oddity [2019 Mix]』と同様、オリジナルアルバムにより深化したMixを施し、「21世紀の『世界を売った男』」として蘇っているのだ。それは『Space Oddity [2019 Mix]』ほど顕著ではないのだが、「ボウイ版(ちょっとひねくれた)ハードロックアルバム」だったオリジナルを、さらにヘヴィにソリッドにラウドにMixしているのである。

ヴォーカルにしてもエレキギターにしてもより攻撃的となり、キーボードなどはどこかしら狂気を帯びた音となり、特にベースとドラムはオリジナルよりもより重く野太くなって音の厚みを増している。こういった変化はオリジナルアルバムがお気に入りの方には好みが分かれる部分があるだろうが、オレ自身は相当にメリハリを効かせたこちらのMixの方が好きだな。

ところでタイトルの『Metrobolist』はフリッツ・ラングの古典SF映画『Metropolis』にかけたものなのだとか。ボウイの前作『Space Oddity』がスタンリー・キューブリックSF映画『2001: A Space Odyssey』にかけたものだということを考えると、ボウイのSF作品への偏愛が見え隠れしていてニヤリとさせられた。

The Width Of A Circle (2020 Mix)

The Man Who Sold The World (2020 Mix)

All The Madmen (2020 Mix)