■バットマン/ヘルボーイ/スターマン/マイク・ミニョーラ
ゴシックホラーの傑作『ヘルボーイ』で、全世界のコミックシーンの話題を独占した、鬼才マイク・ミニョーラ。コミック史に残るアンソロジー『ブラック&ホワイト』で、その魅力を改めて世に知らしめた闇の騎士バットマン。現代アメコミシーンを代表する、最高のアーティストとキャラクターが手を組んだ珠玉の名作3編を日本オリジナル編集!ミニョーラの過去と現在、バットマンの多様な魅力、本場アメリカでも実現していない豪華なラインナップがここにある。
オレは『ヘルボーイ』が好きだ。ギレルモ・デル・トロの映画版2作も当然好きだが、その原作となるグラフィックノベル作品がなにより素晴らしいのだ。原作者であるマイク・ミニョーラの他に類を見ないグラフィックの美しさもそうだが、世界の神話伝承を元に緻密に構成された伝奇的物語に堪らなくそそられるのである。
だから日本で発売された『ヘルボーイ』のグラフィックノベルはほぼ全て収集した……つもりだった。しかし調べると、今まで知らなかった『ヘルボーイ』作品が刊行されていたことを知ってしまったのだ。
作品タイトルは『バットマン/ヘルボーイ/スターマン』。日本発売は1999年の10月。タイトル通り異種ヒーローとのクロスオーバー作品で、『ヘルボーイ』ストーリーのいわば番外編となる物語となるのらしい。
「うへえまだこんなのもあったのか」と購入しようとしたが、既に絶版になっているらしくネットで売り出されているものは定価の数倍のプレミア価格がつけられていた。「おおおう……」値段を見て一瞬躊躇したオレだが、マニアの血はこんなことで収まりはしない。数秒後思いっきりポチッているオレがそこにいたのである。
という訳でオレのモノとなったこのグラフィックノベルを紹介してみよう。収録されている作品は3作、「ゴッサム・バイ・ガスライト」「サンクタム」「バットマン/ヘルボーイ/スターマン」だ。メインはバットマン作品で、バットマンをミニョーラが描いている、という部分に注目し日本独自編集されたもののようだ。
巻頭の「ゴッサム・バイ・ガスライト」は19世紀のゴッサム・シティを舞台に、ロンドンからアメリカに渡ってきた切り裂きジャックとバットマンが対決する、という非常にユニークな作品。いわゆるパラレル・ワールドものということになるが、ガス燈の灯るアメリカ19世紀とバットマン、というのが意外と相性がよく、切り裂きジャックという敵役の陰惨さも相まって実に読ませる作品になっている。またこの作品はアニメ化もされていて、Blu-rayも出てるしAmazonビデオでも観る事ができる。
「サンクタム」は墓場に悪党を追いつめたバットマンが地下墓地で超常の存在と対面する、というもの。これなんかははっきりホラー仕立てで、バットマン作品でホラーというのも意外と珍しいのかもしれない(探せばあるんだろうけどね)。そしてこのホラー仕立ての物語展開がまさにミニョーラの面目躍如といったもので、その後の「ヘルボーイ」における活躍を大いに予感させる出来となっている。
そして最後「バットマン/ヘルボーイ/スターマン」でやっとそのヘルボーイとご対面できる。タイトル通り3ヒーローのクロスオーバー作品だが、”スターマン”だけちょっと一般に馴染が薄いかもしれない。1994年にデビューした新世代ヒーローで、宇宙線をエネルギーにして活躍する。物語はオカルト集団を追ってヘルボーイがゴッサム・シティを訪れ、そこでバットマンと捜査を開始するというもの。敵の本拠地が別の街にあることを突き止めたヘルボーイは、ジョーカー討伐に慌ただしくなったバットマンと別れ、次にスターマンと共闘してオカルト集団を追い詰める。
オカルト集団は例によってナチス・ドイツの残党であり、またしてもクトゥルフ神を地球に呼び寄せようとしており、ヘルボーイはその企みを阻止するため無敵の鉄腕をぶん回すのである。物語的には初期ヘルボーイに見られた痛快な大暴れぶりを楽しめ、大いに満足できた。ミニョーラの描くバットマン作品、さらにバットマンとヘルボーイのクロスオーバー作品の読めるこの『バットマン/ヘルボーイ/スターマン』、ちょいとお高かったが十分満足できたな。
バットマン/ヘルボーイ/スターマン (小プロ・ワールドコミックス)
- 作者: マイク・ミニョーラ
- 出版社/メーカー: 小学館プロダクション
- 発売日: 1999/10
- メディア: コミック
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