■New Energy / Four Tet
エレクトロニカ・ファンなら人気実力共に誰もが認めるFour Tetだが、オレも嫌いではないにもかかわらずどうも「Four Tetの音」というものをすぐイメージできないでいる。いやそりゃあ変幻自在だからといえばそれまでだが、というよりも所謂"エレクトロニカ"な音からこの人の音というのはスルッとすり抜けているからなのかなあ、という気がしないでもない。そのデビューがポスト・ロック・バンドであったり、ジャズや第3世界の音に接近したりフォークトロニカの第一人者と目されたり、こうして並べてみても確かにエレクトロニカの中心にいるわけではない人なのだが、中心にいないからこそ見えるエレクトロニカの音をこの人は作り続けているのかなあ、などとなんとなく思いつきで言ってみたりする。
Four Tetのニューアルバム『New Energy』ではアンビエント/ダウンテンポな曲とミディアムテンポの曲とが半々で、最初に聴いた時はやはりどうもトータルなアルバムイメージがすぐ湧かなかったのだが、聴き続けてみると、ああこれはそれぞれが違うスケッチやリリックのようなもので、DJMix聴いてるみたいに「トータルイメージがー」とか言って聴くべきじゃなかったんだな、と気づかされた。そして1曲1曲に注視しながら聴き、その差異と共通項を見出すことで、Four Tetの全体像がふわっと浮かんでくるのがこのアルバムなのかな、とも思った。こうしてそれぞれの曲の輪郭を把握してみると、いややはり単純に、よく出来たいいアルバムですねこれは。非常に内省的な作品集であり、一つ一つの音をきわめて注意深く扱うことによってとても繊細な構造の音として完成している。それは効果的に使用されたアコースティック音に顕著だろう。抑制されつつもやはりエモーショナルなのだ。そしてこの人の音は、なんだか優しいな、という気がする。 《試聴》
■World Of The Waking State / Steffi
以前紹介したSteffiの『Fabric94』が実に素晴らしかったため、Ostgut Tonからリリースされた彼女のこの新譜も大変楽しみにしていた。するとこのアルバムもまた『Fabric94』で感じたようにアゲすぎずサゲすぎない常に一定の中域を淡々とキープし続けながら展開してゆくテクノ・アルバムであり、それは酩酊でも興奮でもなく明快な覚醒のみを聴くものに与えるのだ。これがSteffiの生み出す音の特徴なのだろう。なおCDはミニサイズの美しいポスターが付録になっており、気に入ったのでフレームに入れて部屋に飾ってしまった。 《試聴》
■Feel The Same / Radio Slave
UKテクノ/ハウスの重鎮プロデューサーRadio Slave(aka Matt Edwards)。これまでも数々の活躍を見せていたがなんとこのアルバムはRadio Slaveとしては初のものだという。様々なジャンルをまたぎ選りに選った音を紡いだこのアルバムはタイトながら重厚、聴くほどに味の出る良盤だ。さすがに長年のキャリアをうかがわせる優れた1作。お勧め。 《試聴》
■Electro-Soma I + II Anthology / B12
Electro-Soma I + II Anthology [輸入盤 / 2CD] (WARPCD9R)_482
- アーティスト: B12
- 出版社/メーカー: Warp Records
- 発売日: 2017/09/08
- メディア: CD
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テクノ・デュオ、B12が1993年にリリースしたデビュー・アルバム『Electro-Soma』のリマスターと2017年リリースのレア・トラック集『Electro-Soma II』をカップリングしたお得版アルバム。インテリジェント・テクノの中心的存在とも言えるB12の音は、端正な美しさと未来的な輝きを湛えた非常に優れたセンスを持ち合わせ、特に『Electro-Soma』パートは今聴いても全く古さを感じさせない素晴らしい完成度で、もはや時代を超越したマスト盤ということができるかもしれない。 《試聴》
■Running Back Mastermix / Tony Humphries/VARIOUS
ドイツのハウス・レーベルRunning Backがレーベル創立15周年を記念し、NYのハウス・プロデューサーTony Humphriesを迎えてリリースしたMixアルバム。ドイツ産ハウスとはいえDJの手腕のせいか非常にファンキーかつソウルフルな匂いがする。良盤。 《試聴》
■Fabriclive 94: Midland / Midland
Fabricliveの94番はロンドン出身のDJ、Midland。眩惑的なループ音から始まるこのMixはクールにミステリアスに進行しつつミニマルなフロア・チューンへ、そしてアンビエントへと紡がれてゆく。あたかもひとつの物語のような起伏を感じさせる良質Mix。お勧め。 《試聴》
■Zenith / Sam Paganini
イタリアのベテラン・プロデューサーSam Paganiniの3rdアルバム。重低音響き渡るフロア仕様のミニマル・テクノ・トラック。 《試聴》
■Ariadna / Kedr Livanskiy
モスクワ出身の女性プロデューサー、Kedr Livanskiyの1stアルバム。ロシアの大地を思わすようなひんやりしたシンセとほんのり温かみのあるロシア語女性ヴォーカルが独特の雰囲気を生んでいる。 《試聴》
■Lone DJ Kicks / Lone
人気DJMixシリーズDJ-Kicksの最新作はUKのプロデューサーLone。ヒップホップ/ブレイクビーツを中心にハウスやアンビエントを展開し、次第にテクノ色を強めつつラストはレディオヘッドで締める!という個性的なMix。 《試聴》