公開40年目にして初めて発売されたボウイ主演映画『地球に落ちてきた男』のサントラ

MAN WHO FELL TO EARTH
そう、映画『地球に落ちてきた男』は稀代の傑作である。かつてオレ的SF映画ベストテン! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミというブログ記事を書いた時も、この作品を第一位に推したぐらいだ。異星からやってきた男の孤独を描くこの物語は、同時にアメリカという巨大な国に飲み込まれ、アイデンティティを失ってしまう一個人の悲哀をも描いていたのだろう。だからこそこの物語は「自分が誰で、どこから来たのか」が執拗なまでに繰り返し繰り返し呟き続けらていたのだ。映画の感想についてはブログ記事デビッド・ボウイ・リバイバル(番外編) 映画「地球に落ちてきた男」 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミで書いているので興味のある方はどうぞ。
さてその『地球に落ちてきた男』、実はこれまでサウンド・トラックが発売されていなかった。それが公開40年目にしてやっと日の目を見ることになったというのがこのオリジナル・サウンドトラックである。発売されなかった事情は契約問題なのかなんなのかは不明だが、今回の発売の経緯にはこちらのWebページ「デヴィッド・ボウイ主演の『地球に落ちて来た男』のサウンドトラックが初めてリリースされることに | NME Japan」にざっくりと書かれている。ここで書かれていたことだが、「実は映画の制作中は、ピンク・フロイドのアルバム『狂気』の音楽を仮でサウンドトラックとしてあてていたことが暴露されている」という部分が面白い。
とはいえ、当時の自分にとって一番不思議だったは、この映画になぜボウイの曲が一曲も使われていなかったのか?ということだった。勿論この映画はボウイのプロモビデオでもなんでもなく、ニコラス・ローグ監督がボウイを"俳優として"起用しての作品だから、当然音楽のコントロール権は全て監督にあったのだろうことぐらいは分かるのだけれども、ときたま映画で、「このシーンでボウイのこの曲が流れたら映えるのに……」と思ったもんなあ。それと、映画製作と同時期にボウイは傑作アルバム『スティション・トゥ・スティション』をリリースしているが、そのうちの何曲かは映画の為に書いたけどボツになった曲とか言ってなかったっけ(そのうちの一曲が確か『TVC15』)。
さてこちらのサントラ自体はツトム・ヤマシタとジョン・フィリップスが中心となって作曲しており、そこにジャズやカントリー、さらにホルストの『惑星』から数曲、といった形で構成されている。アルバムだけ聴いても「ああ、サントラだなあ」という感慨ぐらいしか湧かなくて、ボウイ・ファンのコレクターズ・アイテム扱い以上でも以下でもないとも言える。それに、そもそも最初映画を観た時すら、「音楽が合ってない気がするなあ」と思ってたぐらいだったし。
あとこのサントラ、物凄く残念なのは、映画ラストで流れる曲、『スターダスト』が収録されていないこと!あの曲があったからこそ最高の雰囲気だったのに、なんで入っていないんだよ!?さらに「スターダスト」ってタイトルはボウイとさらにこの作品の主人公両方を象徴している言葉だから、あの曲がラストで入るからこそ重要なんじゃないか!
とはいえ、サントラだけあって曲を流しているとあの映画の世界に意識がじわっと漂い出しちゃうんだよね。だから悔しいけどボウイ・ファンには必携のアルバムかもしれない。なおアルバムは【完全生産限定盤】のボックスセットも発売されており、こちらは

*2CD+2LP
*写真を多数掲載した豪華48ページ・ブックレット付
*ポスター付
*日本盤のみ英文ライナーの対訳付/歌詞対訳付
*完全生産限定盤

といった内容になっているけど、お値段は15000円ほどするので、コアなマニアの方はこちらをどうぞ。さすがにオレは高くて手が出ず2枚組CDを買ったが。
http://www.youtube.com/watch?v=wd9vU1KaQiY:movie:W620

地球に落ちて来た男<デラックス・エディション>(完全生産限定盤)

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地球に落ちて来た男 [DVD]

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