いわゆる「おっさんホイホイ」と呼ばれるものにはなるべく近づかないようにしている。「おっさんホイホイ」とはいい歳したおっさんが、子供の頃に夢中になった何がしかの事柄、アニメや特撮や歌謡曲その他に、懐かしさからついつい再び手を出してしまう行為を言う。
オレの場合、それはウルトラマンやウルトラセブンなどの特撮ドラマである。さらに言うと、仮面の忍者赤影や、キャプテン・ウルトラなんかも入る。仮面ライダーが入らないのは、それはオレの田舎では仮面ライダーがTVでやっていなかったからである。なんたってオレの子供の頃、田舎じゃ民放が2つしかなかったんだぜ!?あとガッチャマンやロボコンもやってなかった気がするなー。まあそうは言いつつ、仮面ライダーカードは田舎でも大ブームでオレもカードシコシコ集めてはお菓子捨ててたけどね!
話が逸れたが、オレがおっさんホイホイ物件に近寄らないようにしている理由は、基本的にボックスセット形式の高額商品になってしまうから、という経済的な理由がある。さらに、そんな高額商品を買ったとしても、今観て面白いかどうか、といった理由がある。思い出補正は掛かってはいるだろうが、思い出に金使うよりは、今現在にある面白いものに金使ったほうが新鮮さが違うだろ、と思う訳である。オレは新しいもののほうが好きなのだ。
さてそんなオレではあるが、この『成田亨作品集』をネットで目にしたときは速攻でポチッてしまったことを白状せねばなるまい。成田亨、上に挙げた書影を見れば明らかなように、かつて円谷プロのSF特撮ドラマで怪獣その他のデザインを手掛けた人である。詳しい略歴などはWikipediaをご覧になるといい。実際の所自分は成田亨の名前をこの本を見るまで知らなかった。だから成田氏の功績を一堂に会したこの本を見て、氏がどのようなデザインを手掛けていたか初めて知った程度の人間である。
成田氏の怪獣デザインは今見ても思い出補正など関係なく素晴らしいと思う。元は彫刻家だったと聞くが、アート全般に通じているであろうシュールさがデザインの中に横溢している。またこの本の中の成田氏のインタビューでは、氏がどのようなこだわりを持って怪獣たちをデザインしていたのか知ることができ、これは非常に興味深く読むことができた。
この本ではウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブン、マイティジャック、ヒューマン等お馴染みの円谷特撮デザインが収められているほか、氏が企画しながらも日の目を見なかった特撮ヒーローや怪獣のデザインも収録されている。ただしこれら後期の企画デザインは、やはり没企画だけあって氏の作品のセルフコピーとでもいうような悪達者な作品となっており、資料的には面白いもののデザインとして目を見張るものが無いのが残念だ。本ではその他、神話伝説上のモンスターを描いた「モンスター大図鑑」、さらに特撮怪獣を離れた美術作品、特撮美術などが収められている。また、この本で成田氏がメカデザインも手掛けていたことを初めて知り、その才能振りに驚いた。
どちらしろ一つの特撮史を知る上でも、またユニークな美術書としても楽しむことができ、5000円で400ページあまりという高額・大部な本ではあるが、買って損は全く感じ無かったし、これからもためすがめつ眺めることになるであろう本であろうと思った。というわけでウルトラファンの皆さん、あなたも買いなさい。
なお収録作品の一部はこちらでも確認することができる。