映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』はまあまあだったかな

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ (監督:マイケル・ドハティ 2019年アメリカ映画)

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■オレとゴジラ

怪獣が好きだった。ウルトラマンウルトラセブンの、円谷怪獣が好きだった。怪獣が好き過ぎて、当時小学校にまだ上がっていない年齢なのにもかかわらず、【怪獣】という漢字を覚えてノートに書き殴っていた程だった。

しかし困ったことにゴジラには思い入れが無い。確かに70年代までのゴジラ映画は殆ど観ているのだが、それは子供の頃だったからであり、好き嫌いに関わらず子供は特撮やアニメや怪獣映画はなんとなく観るものだからだ。オレは1962年の生まれだから、多分『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)前後から劇場で観ていると思うのだが、実はどちらかというとガメラのほうが好きだった。

第1作目『ゴジラ』(1954)自体はレンタルビデオが一般的になった頃にお勉強のつもりで観た。古い映画だな、と思った。その程度だ。そして80年代以降のゴジラ映画は一切観ていない。やはり興味が無かったのだと思う。ローランド・エメリッヒ監督によるハリウッド版『GODZILLA』(1998)はオリジナル・ゴジラに興味がない分単なるディザスター・ムービーとして面白く観られた。ギャレス・エドワーズ監督版『GODZILLA ゴジラ』(2014)は「いろいろあちこちに気を遣って頑張ってるな」と思った。まあそんな感想だった。それよりもゴジラ・インスパイア作品『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)がオレには一番好きな怪獣映画なのかもしれないと思う。ああ『シン・ゴジラ』(2016)を忘れてたな。あれはサイコーってことでいいんだと思う。ゴジラの概念を一度解体して再構築してある。そしてしっかりとコワイ。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

という訳でゴジラ映画新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(KOM)』である。ストーリーは説明するまでもない。「今回もゴジラが大暴れですよ」という映画である。そして「ゴジラだけじゃなくて他にもいっぱい怪獣が出てきて暴れまわるんですよ」という映画でもある。さらにこの作品、『GODZILLA ゴジラ』(2014)、『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)と続く「モンスターバース」なるメディアフランチャイズの3作目となるのらしい。ちなみに4作目として『Godzilla vs. Kong』が予定されているのだとか。

でまあ、感想としては、面白く作ってあるし、実際面白かったな、と思った。ただそれ以上でもそれ以下でもない、というか、特に強烈な思い入れや印象をおぼえたかというと、それが特に存在しないのだ。VFXが派手に躍る「見世物映画」としては十分楽しんだけど、まあそれだけだった、ということなのだろう。要するにお話としてはノレなかった。なんなのこれ?なんでこうなってるの?とずっと思いながら観ていた。

なんなの?っていうのは、なんで怪獣なの?ということで、なんでこうなってるの?というのはなんで怪獣同士戦わなきゃならないの?ということだ。いや、それは物語で説明されていて、そしてそれは十分だとは思う。理に適っているとか整合性があるとかそういう事ではなく、それはそういう世界観で成り立っている映画だからだ。ただ結局、オレ自身がそういった世界観に興味が持てなかったというだけなのだろうと思う。完成度という事で言えばエンターティメント作品としてしっかり出来上がっていると思う。ただ、オレがノレなかった、ということなのだ。

怪獣にもう魅力を感じない?いや、こないだの『キングコング』は面白く観ていた。「うっひょーデッカイ怪獣がいっぱい出てくるぜー!」と興奮していた。あのアホみたいなモンスター映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』も、「ロック様のほうが全然怪獣ー!」とかいって喜んで観ていた。じゃあなんで『KOM』はノレなかったのかなあ?と考えてみるに、うーんどうも、主役たるゴジラにも、他に登場するキングギドラモスララドンにも、全然新鮮さを感じられなかったせいのような気がする。要するにこれら怪獣の面々は、「子供の頃に散々見せられて見飽きた連中」でしかないのだ。

思えば子供の頃観ていたゴジラに「特に思い入れが無」かったのは、70年代までのゴジラ作品は敵怪獣の使い回しが多く、子供心に「またこの怪獣かあ」とうんざりしていたことが挙げられる。しかも当時田舎ではゴジラ映画が何度も再上映されていて、そして親のほうも何度目だろうがとりあえず怪獣映画なら喜ぶだろうとオレを劇場に連れて行き、そんなオレも「散々見せられて見飽きた連中」と思いながらぼんやり観ていた、そんな経緯があった。オレがゴジラ映画で唯一好きでDVDでも持っているのは『ゴジラVSヘドラ』だけなのだが、それはあの怪獣がオンリーワンであり、物語の在り方も怪獣に付随したユニークさを兼ね備えていたからだった。しかしこの『KOM』には「子供の頃に散々見せられて見飽きた連中」がまたぞろ登場してきて、それで魅力を感じなかったんじゃないかな。

同時多発テロとしての怪獣戦争

付け加えるなら、物語の鍵を握るあのお母さんのやりたいこともやってることもさっぱり意味が分からなかったし、モナークなる怪獣監視秘密組織がアベンジャーズのシールドに見えてしょうがなかったし、にもかかわらず全然弱っち過ぎて鼻白んだ。世界中に拠点を持ち圧倒的な軍事力を誇りながらちんまいテロリストにてんてこ舞いさせられる様子ってェのは、強大な軍事力を持ちながらテロ組織アルカイダに煮え湯を飲まされたアメリカって事なんだろう。で、テロ組織が解放した怪獣たちが大暴れするってな図式は見事に同時多発テロですな。その抑止力として使ったのが同じ怪獣であるゴジラ、ってェのも、今度は歴史を遡ってソ連のアフガン侵攻を阻止するためにアフガンゲリラに投入された武器ってェことになり、その武器を持った連中がアルカイダになりアメリカに牙をむく、というループ構造をしている、要するにゴジラだっていつまで味方か分かんないですよ、なんて含みもある、なーんてのは考えすぎかな!

あとやっぱり、「怪獣デカイスゴイツヨイカッコイイ」ではあっても「コワイ」が欠けてたんじゃないかな。「自分もそこにいて多分巻き込まれて確実に死ぬ」という気にさせてくれない。やっぱり兵隊さんばっかり殺されるんじゃなくて一般市民が大量虐殺され屍累々となっている描写がもっとないと満足できないな!

渡辺謙は存在感だけはしっかりあって、それだけでよかった。ショートカットの東洋系女優、素敵な人だなあと思ったらチャン・ツィイーだったのでびっくりした。タフな黒人女性大佐にちょっと萌えた。部下になって厳しく鍛えられたいと思った。オリジナル・ゴジラをオマージュしたアレやコレには大いに心くすぐられたが、ちょっと卑怯かな、という気もした。だってメチャクチャ盛り上がったのがそこだったもの。核爆弾と核開発への警鐘だった物語が核爆弾で救われるという展開は、多分深いことは特に考えてないんだろうな、とは思えた。

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