毛むくじゃらと毛無しの戦い!?〜映画『ホビット 竜に奪われた王国』

ホビット 竜に奪われた王国 (監督:ピーター・ジャクソン 2013年ニュージーランド/イギリス/アメリカ映画)

■わしらのショバを取り返すんじゃあッ!!

毛むくじゃらのあいつらが帰ってきた!という『ホビット』3部作第2弾『ホビット 竜に奪われた王国』であります。映画が始まって、中つ国の情景といつもの面々が登場した時、観ている自分が「あーやっとこの世界に帰ってこれた」って思ったほど感激至極でしたよ。映画はIMAX HFR3D版で観てきました。

この物語、怪しい魔法を使う白髪の爺さんガンダルフにうまくまるめこまれたホビット「ちっこい」族のビルボさんが、ドワーフ「毛むくじゃら」族の皆さんと危険な旅に出るところから始まります。ドワーフ族の皆さんは大昔、東京ドーム100個分ぐらい(当社比)の黄金を所蔵する王国で我が世の春を謳歌していましたが、ヤクザもんのドラゴンにショバを奪われ亡国の民と化していたんですな。で、ドラゴンやっつけて王国を取り戻そうぜ!というのがこの物語の目的となるのです。しかし道中、オークとかトロルとかゴブリンとかのメッチャ不細工で臭そうな連中が次々に襲ってきてさあ大変、かくしてちっこいの&毛むくじゃらな皆さんの、危機また危機の大冒険が繰り広げられる、というものなんですな。

■エルフ談:「シャンプーもトリートメントもしてないドワーフってキモイ!」

第2作目であるこの『竜に奪われた王国』でも冒険はまだまだ続きます。メッチャ不細工で臭そうな連中の追撃は止むことを知らず、ガンダルフは「この森笑っちゃうぐらい危険だけど近道だから。あ、あとオレ用事思い出したんで抜けさせてもらうわ」とか言っていなくなるし、入った森は育ち過ぎの蜘蛛の皆さんが「御馳走まだあ?」と待ち構えてるし、森の奥ではエルフ「キューティクル命」族の皆さんが「シャンプーもトリートメントもしてないドワーフキモイクサイキライ」とか言ってツンツンしてるし、その後辿り着いた人間の町は闇金ウシジマくんが100人ぐらいいそうなゲットーだし、やっと辿り着いたエレポールとかいうサンポールみたいな名前の山にはエディ・マーフィークリス・タッカーかっちゅうお喋りなドラゴンがいるし、もーサーイテー!しかもその背後には世界征服を狙う悪の総合商社ドクター・イーブルことサウロンが怪しく蠢いていたんですな!ホーホッホッホッ!!

この『ホビット』、毛があるか無いかが善悪のバロメーターになった、「毛の多い者と毛の無い者との戦い」ということが出来ると思います。即ち「《毛が多い:味方/善》ドワーフ御一行様、ガンダルフ、ビヨルン>《ほどほど毛が生えている:中立/どっちかというと善》ホビット、エルフ、人間>《毛が無い:敵/悪》オーク、ゴブリン、ドラゴン」という図式です。このセオリーで申しますと、窮極の悪であるネクロマンサー/サウロンは、作品ではもやもやした光とか甲冑の姿でしか現れませんが、《まるで毛が無い》という結論に達することになろうかと思われます。そう、あのサウロンはツルッツルのズルムケオヤジだということになるんですね!多分相当テカッてると思うな!ではゴラムはどうかと申しますと、あいつちょっとだけ毛があるんですね。だから《悪/敵に限りなく近いが善の心も持ってる》ということになるんですよ。「一つの指輪が全てを総べる」のが『LOTR』の物語でしたが、こと『ホビット』に関しましては「毛の量が全てを総べる」物語だったんですな!いやはやなんとも!

■もうレゴラスしか見えない!?

さて冗談はこのぐらいにしまして、今作も前作と同様、目一杯見所が満載になっております。満載過ぎて全部書いてるとそれこそこの映画のエピソードを全部書き出さなきゃならなくなりますので割愛しますが、一番びっくりしたのはサウロンがビルボに「お前は私の息子だ」と言い放つシーンですね。すいませんこれも冗談です。ええと、今作は「冒険冒険また冒険!」とばかりに胸焼けしそうな位お腹一杯戦闘と冒険が繰り広げられた前作と同じながら、『LOTR』のレゴラスの登場とその大活躍ぶりが、むさ苦しい登場人物ばかりのこの物語に涼風を運んでくれていますね。あまりにも強力なもんですから、もう冒険いいからレゴラスに全部任せとけよ…ぐらいに思えてしまいました。映画館のホビット・グッズもレゴラスだらけでしたよ。

ただし不満に思えた部分も無くはありません。エルフとドワーフの恋かあ…うーん…。それとこのエルフ娘タウリエル、『LOTR』には出てこないわけでしょう、てことは3部目で何かが…とちょっと勘繰っちゃいますね。人間の町のパートは町並みも登場人物にも何か魅力を感じなかったなあ。だって、なんかババッチイんだもん!あと、火を吐くような竜にあの対決の仕方は、RPG的な観点で考えると逆効果になるように思えるけど。全体的に、3部作の中間ということもあってか、これだけ詰め込んでいるのになぜか間延びした印象があるんですよ。これも原作アレンジの功罪でしょうか。ラストもクリフハンガーしてましたが「どのみちアレがアレをアレしてアレになっちゃうんでしょ?」としか思えなくてイマイチ盛り上がらない。でもこの辺の不満は完結編で大いに盛り上げてもらって解消してくれる筈ですよね?原作通りだとこの後とんでもない大戦争が巻き起こるわけですから、大いに楽しみにしております!

ホビットの冒険〈上〉 (岩波少年文庫)

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ホビットの冒険〈下〉 (岩波少年文庫)

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ホビット〈上〉―ゆきてかえりし物語

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ホビット〈下〉―ゆきてかえりし物語

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