トム・クルーズ主演で映画化のラノベ『All You Need Is Kill』を読んでみた

All You Need Is Kill / 桜坂洋

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

「出撃なんて、実力試験みたいなもんじゃない?」敵弾が体を貫いた瞬間、キリヤ・ケイジは出撃前日に戻っていた。トーキョーのはるか南方、コトイウシと呼ばれる島の激戦区。寄せ集め部隊は敗北必至の激戦を繰り返す。出撃。戦死。出撃。戦死―死すら日常になる毎日。ループが百五十八回を数えたとき、煙たなびく戦場でケイジはひとりの女性と再会する…。期待の新鋭が放つ、切なく不思議なSFアクション。はたして、絶望的な戦況を覆し、まだ見ぬ明日へ脱出することはできるのか。

ラノベって「少年少女向けなんだろうなぁ」って思ってていい歳こいたジジイのオレはこれまで一度も読んだことが無かったんですが、今回読んだ桜坂洋・著『All You Need Is Kill』はれっきとしたラノベなんですね。なんでラノベ門外漢のオレが手を出したかというと、SFっていうのもありますが、なによりこの作品、トム・クルーズエミリー・ブラント主演、ダグ・リーマン監督で2014年公開に向け現在ハリウッドで着々と制作されているということをネット記事で読んだからなんですね。ダグ・リーマンといえば『ボーン・アイデンティティー』『Mr.&Mrs. スミス』『ジャンパー』の監督で、そんなもんですからまあ仕上がりは若干ライトになりそうな気もしますが、公開自体はIMAX3Dで予定されているらしいですよ!なんか超大作ぽいじゃん!なにしろ主演がトム様というのがびっくりですね!いやー、トム・クルーズ主演のラノベ原作ってなんか凄い気がしません!?とりあえずこれがオレが最初に見たトム君の『All You Need Is Kill』中の一コマです!

いやあなんかトム君必死すぎる顔がちょっぴり可笑しいのですが、きっと映画の中では相当熾烈な戦闘が行われているシーンに間違いがありません!とりあえず2014年公開は随分先ですが首を長くして待っていましょう。その前にトム君主演の『アウトロー』とか『オブリビオン』とかも公開されるしね。特に『オブリビオン』はSF作品なんで期待してるんだよなー。

さて小説ですが、これが「これでラノベなの?」と思っちゃうほどハードな展開です。銃弾と爆炎が覆う過酷な戦場の描写のみならず、丁寧に説明されるアーマード・スーツの兵器としての性能描写、次から次へと死体と化してゆく戦友、圧倒的な破壊力と耐久力を持つ異星改造生物の不気味さ、そしてこの異星生物「ギタイ」がなぜ地球を襲うのか?この生物はいったいなんなのか?というSF的な説明、どれもハードにSFなんですね。このハードさが自分が漠然と抱いていたライトノベルのイメージを払拭してくれるのですよ。しかしそこはラノベ読者へのサービスなのか、ドジっ娘が出てきたりやたら元気のいい戦友が出たりしてファンにきちんと目くばせしているところが逆に作家としての真摯さを感じたぐらいなんですよ。
そしてこの物語の中心となるテーマは、そんな過酷な戦場に送り込まれた主人公兵士が、「同じ戦闘をループして何度も死を体験する」という個所にあるんですね。このループにもきちんとSFらしい説明がなされていて非常に好印象なんですが、なにしろ「なぜ俺はループの中で何度も死を体験しなければならないんだ?」という主人公の疑問が次第に明らかになってゆき、それが「戦場の牝犬」と呼ばれる全戦無敗の無敵女性兵士のもうひとつの物語が絡んでゆくことで、この物語の全体像が明らかになってゆく、という構造になっているんですね。そして物語は凄まじい戦闘の果てに無情と虚無のクライマックスを迎えてゆく、という恐るべき展開なのですよ!筒井康隆神林長平氏にも絶賛されたというこのSF小説、いやあこれは続編希望だわ。
翻訳作品のアメリカ・アマゾンの評価もなかなか高いですね。「俺はアメリカのソルジャーだ」という方のレビューが読ませますよ。

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)