■ピノキオ / ヴィンシュルス
内容紹介
今フランスで注目の若手BD作家にして、アニメ映画『ペルセポリス』の監督でもある気鋭のアーティスト、ヴィンシュルスによる2009年のアングレーム国際漫画祭グランプリ作品が待望の初邦訳! タイトル通り、あのディズニーアニメで有名な『ピノキオ』を大胆に改変し、世にも邪悪な物語に仕立て上げた作品です。 強欲なゼペットの手で生み出された従順なロボット、ピノキオ。ピノキオを大量破壊兵器として軍部に売り込もうと画策するゼペットだったが、とんでもない不慮の事故をきっかけにピノキオは放浪の旅に出ることに。一方その頃、ピノキオの脳内には、芸術家気取りの飲んだくれゴキブリ、ジミニーが寄生し始め……? 下品で悪意に満ちたキャラクターが奇妙に絡み合う、大人のための邪悪なファンタジー。2009年アングレーム国際漫画祭グランプリ作品。
- 原典であるカルロ・コッローディの『ピノッキオの冒険』を基にしたというよりはディズニー・アニメ『ピノキオ』を下敷きにしたバンドデシネ作品なんですけどね。
- いやもうこれが下品で悪辣で冷笑的、『ダークサイド・オブ・ピノキオ』というか『ピノキオ/血煙地獄変』というか『変態ピノキオの冒険・ボクのお鼻はエレクチオン』というかそういうコミックになっているんですね。
- まずこの物語のピノキオは大量破壊兵器として製作されたロボットで、ピノキオを作ったゼペットはそれを軍部に売り込もうしたらピノキオが暴走、軍施設を全滅させちゃう、なんていう出だしから既に怖いお話ですよねえ!
- あとゼペットの奥さんがピノキオを性奴隷として弄ぶんですが、ピノキオの鼻を張り方にみたてて跨っちゃうんだけど、実はピノキオの鼻は火炎放射器で、跨った奥さんは火達磨になって絶命する、なんていうエピソードも本当に楽しいですね!
- 奥さんの死体を発見したゼペットは発覚を恐れて死体を切り刻み森に行って埋めちゃう、という部分もナイスだなあ!
- 冒頭だけでこれなんで、その後の展開は推して知るべしです!
- しかも原作ではいわゆる"ピノキオの良心"として登場するコオロギが、このコミックではゴキブリ!それもなんにもしねえ宿六で物語自体にもあんまり寄与せず単に己のルサンチマンをばら撒いているだけ!このゴキブリ、どうやら作者の化身らしいんですけどね。
- そしてピノキオが歩く後には死と破壊と絶望しか残らない!洗脳国家が登場します!戦争も起きます!大量に人が死んでゆきます!"生まれながらの負け犬"な少年とピノキオとのエピソードは悲惨すぎて笑いが止まりません!
- 「外を歩いている女をかっさらって白雪姫の衣装を着せ輪姦する7人の小人」のエピソードとかも極悪ですよね!
- なんて救いのないピノキオなのでありましょうか!
- こんな風に史上最低最悪のピノキオ・ストーリーが描かれているんで極悪好きの方には是非オススメします!
- ただピノキオ改変ストーリーやアイディアを戴いた物語って結構な量があったりするんで、テーマとしてはちょっぴり新味がないようにも思えました。
- とはいえ、ピノキオは旧約聖書中のヨナ記や、三位一体や堕落、贖罪、復活などキリスト教的なモチーフがふんだんに盛り込まれている物語でもあるわけで、これをダークに描くということはキリスト教圏欧米人にとって「アンチ・クライスト」なアナーキーなものだということも出来るんでしょうね。
- 作者: ヴィンシュルス,原正人
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 単行本
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