デス・レース (監督:ポール・W・S・アンダーソン 2008年アメリカ映画)


命知らずの極悪人たちが刑務所出たさに優勝を狙う、銃撃・爆撃なんでもありのブチ殺し合いカーレース、『デス・レース』である。主人公は妻殺しの無実の罪を晴らすべく、死と銃弾と爆炎に満ちたコースへと赴く。

監督のポール・W・S・アンダーソンはオレの大好きな監督である。『モータル・コンバット』『バイオハザード1〜3』『エイリアンVSプレデター』『DOAデッド・オア・アライブ』などのゲーム系・企画モノ系の監督・製作にその手腕を発揮し、そこそこの制作費で原作ファンの期待を裏切らない手堅く見ごたえ十分の映画を撮るある意味良心的な職人監督だ。見せるところはきちんと見せますよ、といった撮り方をする監督で、ゲーム好きのオレも実に満足のいく作品ばかりである。

反面、なにもかも分かりやすく作ってある分、奥行きが無く薄っぺらで物語にも画面にも深みが無い。人間なんか全く描きはしない。兎に角見せ場を作ることにのみ特化した監督で、その為物語がちぐはぐになることなど当たり前、突っ込み所満載の映画を平気で作る。どこか映画というよりもコミックに近いノリを感じさせる。だからチャチイとか貫禄が無いとか取られることが多いかもしれないが、見せる事には正直、といった態度がいい。スカッと爽快、そして何も残らない。B級映画の王道中の王道である。この『デス・レース』もそのアンダーソン節が全開の映画に仕上がっている。

さてこの『デス・レース』はしょーもない映画を作ることでは右に出るもののいないロジャー・コーマンの『デスレース2000』のリメイクであるが、馬鹿馬鹿しさではコーマン版に負けるものの、アンダーソン版では彼ならではの味付けが成されていて面白かった。走行するマシンが路面の「剣」「盾」などのプレートを踏むと銃が使えるようになったりオイルやスモークを出せるようになったりなんてぇのは、原典の『デスレース2000』にもあったかどうかは覚えていないんだけれど、マリオカートワイプアウトあたりのビデオゲームを髣髴させ、ゲーム原作監督のアンダーソンらしいなあ、とちょっと笑ってしまった。

ギミック満載のコミック風レースではあるが、カースタントの迫力は満点で、物語が多少ヘナチョコでもこのレースシーンだけで十分満腹感を味わえる。多分CGなんて使わずに頑張ったんだろうなあ。オレは車のことはよく分からんのだが、知ってる人が観れば結構なテクニックと面白い車種の選び方をしているのが分かるかもしれない。レース映画としても手を抜いていないのだ。それでも途中から登場した『マッドマックス2』風の大型トレーラー「ドレッドノート」の遣り過ぎ感には爆笑させてもらった。あれってなんか意味があんのか?と思いつつ、「派手でいいでしょー!?」と喜色満面の監督の顔が目に浮かんで全て許せてしまうのだ。

主人公フランケンシュタインを演じるのは憲兵顔というか工事現場顔のジェイソン・ステイサム。『トランスポーター』あたりから気になっている男優だが、『アドレナリン』のアホアホ演技でオレの好感度は目下急上昇である。しかしプロフィール調べてみたら元水泳選手でオリンピック出場経験もありとか。単に無駄に筋肉の付いたチンピラではなかったらしい。あと贅沢を言うなら、もっとレースクイーン風のエロいオネーチャンをいっぱい出して欲しかったな!ミラ・ジョヴォヴィッチと結婚して女にはもう満足ということかアンダーソン監督!映画は十分面白いから今度はそっち方面もサービスしてくれ!

■Death Race - Official Trailer