宿泊客56人が謎の死を遂げたというドルフィンホテル「1408号室」にオカルト作家マイク(ジョン・キューザック)が乗り込むが…S・キング原作のホラー映画。
ホラー小説の帝王などと呼ばれているが、S・キングの小説というのは長くクドく嫌ったらしいのが基本である。この映画『1408号室』もその定石をしっかり踏み、実に長くクドく嫌ったらしい仕上がりをみせている。怪奇現象の起こるホテルの部屋に閉じ込められ、次から次へと異様な体験をするというのがこの映画のキモだ。
しかし「1時間もいられないだろう」というその1時間の内に、水責め火責め氷責め、霊体が闊歩し壁からは血が噴出し、有り得ない幻覚が主人公を襲い、死んだはずの娘が現れ、終いには部屋中瓦礫だらけになってしまうという、まあ忙しい忙しい、変な意味でサービス精神満載のお化け屋敷(というか部屋)なんである。
来てもらったからにはタップリお見せしますよ!飽きさせませんよ!という怪奇部屋さんの律儀さに逆に「よくやるなあ、頑張ってるなあ」と感心してしまったぐらいである。や、ちょっと落ち着いてじっくり怖がらせるとかもあんだろ?一所懸命なのは分かるが、こんな矢継ぎ早だとちょっと疲れるんだよ!とひたすらパワフルに攻めの一手の怪奇部屋さんに意見のひとつも言いたくなったぐらいだ。女口説く時だって攻めばかりだと飽きられるぞ!
っていうかこの怪奇部屋さん、なんだか遊園地のアトラクションみたいで、命の危険さえ無ければ金とって客に開放し、スリル満点の超常現象を味わってもらう、なんていうのもありかもしれない。S・キング原作で同じ「幽霊屋敷」ものにはあの有名な『シャイニング』もあったが、あの寒々とした恐怖は閑散とした巨大なホテルがあったればこそで、2、3部屋しかない小部屋では兎に角手数で勝負するしか怖がらせられないと怪奇部屋さんも判断したのかもしれない。
どっちにしろ長くクドく嫌ったらしいのは確かで、最後まで怪奇部屋になんで怪奇現象が起こるのかは明かされないし、最初から最後までワアワア喚きながら七転八倒するジョン・キューザックの顔もだんだん鬱陶しく感じてくる。だいたい怪奇部屋に入って間もなく、「窓に手を挟んだ!」「熱いお湯で火傷した!」なんて程度で身も世も無く絶叫し悶絶し、「もうこの部屋から出してくれえええ!」と哀願する様子は「これはコメディ映画なのか?」とさえ思ってしまった。お前大げさすぎなんだよ!