デス・レース4 アナーキー (監督:ドン・マイケル・ポール 2017年アメリカ映画)
『デス・レース4 アナーキー』がリリースされたのでこれまでの『デス・レース』シリーズをおさらいしてみよう
ロジャー・コーマン製作の伝説的カルトSF作品『デス・レース2000年』をあのポール・”嫁はミラ・ジョヴォヴィッチ”・W・S・アンダーソンが監督し、ジェイソン・ステイサムを主演に据えて映画化された作品『デス・レース』。オレは非常に好きな作品で、ステイサム主演映画としても相当上位に入るお気に入りである。実はこのアンダーソン版『デス・レース』、その後もビデオスルーながら続編が作られ続けており、オレもそれら作品を結構楽しんでいるのだ。いわばオレは『デス・レース』ファンなのである。そして今回その第4作目となる『デス・レース4 アナーキー』が晴れてソフトリリースと相成った。これを記念して、歴代『デス・レース』をここでザックリと紹介し、皆さんをめくるめくデス・レース・ワールドへといざなおうというのが今回の目的である。では行ってみよう!
まず最初にロジャー・コーマン版を紹介してみる
◎デス・レース2000年 (監督:ポール・バーテル 1975年アメリカ映画)
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デヴィッド・キャラダイン主演作品だが、『ロッキー』でブレイク直前のシルヴェスター・スタローンが出演しアホアホなドライバーを演じていることで知られている作品でもある。時は西暦2000年、政府公認の通行者ぶっ殺しまくりレースを描くディストピア映画なのだが、大昔観た切り全く内容を忘れていたので数十年ぶりに再見した。するとどうだ、以前は単なるおバカ映画だという印象だったのだが、確かにお下劣殺戮シーンとお下品エロを下世話に見せつつも、その見せ方は皮肉と批評を存分に効かせ、アナーキズムという裏テーマを持った素晴らしくバランスのいい娯楽作でありカルトムービーだったじゃんかよ!あと ↑ のアマゾンのBDジャケット、「殺戮エディション」のBDでは ↓ の画像を使用しており、これがまた最高なんだぜ!みんなもBDで買って部屋に飾ろうぜ!
◎デス・レース2050 (監督G・J・エクターンキャンプ 2015年アメリカ映画)
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『デスレース2000年』は2008年にアンダーソン監督によってリメイクされたが、それとは別に2015年、本家本元のロジャー・コーマン自身が正統リメイクしたのがこの『ロジャー・コーマン デスレース2050年』。粗筋も物語の流れも『2000年』と殆ど一緒だが、この『2050年』は前作を上回るお下劣お下品サイテー展開が炸裂する!エロと切り株と毒々しさも一層増大!移民や障碍者児童をターゲットにしたりとか、やっていいのかそれ!?そして同時に、皮肉と批評と冷笑ぶりもさらにパワーアップし、このスタンスがこの作品を単なるB級おバカ映画に留めていない所が素晴らしいんだね。今日的要素としてはドローンやVR、AIマシーンの登場やビデオゲーム的演出がここかしこに採用されているという部分で、これがまた結構イイ感じでSF的雰囲気を醸し出しているんだよ。低予算映画なんだろうがオレにとって映画ってこの程度でいいって思えたぐらいだな。ひょっとしてアンダーソン版より出来がいいって思っちゃったぐらいだ?!意外と隠れた傑作かもしれないのでこういうのがお好きな方は是非ご覧になっていただきたい。
さてお次はアンダーソン版を紹介してみる
◎デス・レース (監督:ポール・W・S・アンダーソン 2008年アメリカ/カナダ/ドイツ映画)
オレの大好きなジェイソン・ステイサム主演作品であるというだけで既に1億点ぐらいの点数を上げたい作品である。ステイサムは『トランスポーター』(2002)あたりで既にブレイクしていたが、オレにとってのステイサムはなんといっても『アドレナリン』(2006)とこの『デス・レース』 のステイサムなんだよ!物語はオリジナルの「公道一般人殺しまくりレース」から「刑務所内における終身刑受刑者同士の殺し合いレース」という形にシフトしているが、むしろアンダーソン版はよりシリアスでダークなバイオレンス作品を目指したということなんだろう。出て来るマシーンも『マッドマックス』を彷彿させるモンスターカー揃いでその辺りもgood。相手レーサーの派手な死にっぷりも楽しい。こういった部分にオレは大いにハマったんだねー。アンダーソン映画としても完成度高いんじゃないかな。
◎デス・レース2 (監督:ロエル・レイネ2010年アメリカ映画)
ここからシリーズはビデオスルー作品としてリリースされることになる。アンダーソン版2作目(2作目からは製作のみ)となるこの『デス・レース2』、実は前作の続きではなくて前日譚という形を取っている。そして「デス・レースとはなぜどのように誕生したのか」「主人公フランケンシュタインはどのようにして生まれたのか」が描かれることになるのだ。ステイサムは出演していないが、今作から主演を務めるルーク・ゴスが意外とイイ味を出している。それと今作からダニー・トレホが出演、トレホ好きのオレにとって今作の好感度を上げることとなった。作品としてはアンダーソン版1作目を引き継ぎダーク&シリアス路線で、ビデオスルー作品ながらなかなか魅せるものとなっていた。 それと1作目に出演の敵ドライバーも登場するのでこれもお楽しみ。
◎デス・レース3 インフェルノ (監督:ロエル・レイネ 2012年アメリカ映画)
アンダーソン版3作目は『2』から物語を引き継ぎ、出演者もルーク・ゴス、ダニー・トレホ含め殆ど一緒。そしてこの『3』、これまでよりさらにパワーアップし、舞台を刑務所から南アフリカの砂漠地帯へと移してオフロード大殺戮レース大会が開始されることとなるのだ!これまでは相手レーサーとの殺し合いだったものが今回さらに過酷な熱砂の環境が殺しにかかってくるというダブルにデンジャラスなレースになってるんだね。こうしたロケーションの転換がマンネリ化を回避し、新たな「デス・レース」展開を楽しませてくれる。例によってビデオスルー作品なんだがなかなか頑張ってくれてると思ったね。
そして『デス・レース4 アナーキー』だ!
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といわけで『デス・レース4 アナーキー』である。2作目3作目が1作目の前日譚の体裁を取っていたものを、今作は1作目の後日譚の物語ということになっているんだね。ただしステイサムが出演しているわけではなく、「その後のデス・レース」を描いている。
1作目の後、アメリカではさらに犯罪者が増え、刑務所に収容しきれずに広大な工業地帯跡地を壁で囲い、そこに犯罪者を閉じ込めていた。いわゆる『ニューヨーク1997』方式という訳だ。そしてここで犯罪者たちは自発的にデス・レースを行って放送し、資金源としていた。しかし犯罪者が英雄視されることに危険を感じた政府はここに暗殺者を送り込み、デス・レースのヒーロー、フランケンシュタインを抹殺しようと画策した……というのが物語。
これまでのデス・レースが「権力によって死のレースを強制される犯罪者たち」という抑圧の物語だったものが、今作では「己の強大さを誇示するために犯罪者同士が行う刑務所内権力闘争としてのレース」という形でシフトチェンジしている部分が今作の面白さだ。広大な刑務所は犯罪者たちが巣食うひとつの街と化しており、その光景はあたかも『マッドマックス』の如き世紀末無法地帯だ。
だからこの物語、『マッドマックス』フォロワー作品として色彩が濃厚だ。犯罪者は誰もが皆けばけばしいパンクなファッションに身を包み、そこここにモンスターカーが走り回り、死と暴力に塗れた狂った世界に生きている。そこではフランケンシュタインという絶対的な権力者が君臨し、犯罪者たちに崇められているんだ。エロとバイオレンスはこれまで以上に過激に描かれ、文字通り「アナーキー」な世界を表出させている。バイオレンスはともかくエロに関しては多分「デス・レース」史上最多と思われるエロエロネーチャンの群れが登場しており、時折意味もなく大股開きなどを見せてくれてサービス満点である。
とはいえ精一杯過激さを演出しつつも、結局『マッドマックス』を始めとするポスト・アポカリプス世界観の使いまわしでしかないと言われればそれまでだし、それらを模倣した安っぽい映像が並べられているだけという見方もできてしまう。物語性も人間関係の描き方も、キモである筈のレースシーンですら、これまでの「デス・レース」の中で一番薄っぺらい。
しかしね。模倣でも安っぽくても薄っぺらくとも、やはり【ヒャッハー!】な世界観というのは十分魅力的なのは確かで(オレにとっては)、もうこんなのを観られるだけでいい具合に満足できるんだよね。逆にとことん馬鹿馬鹿しくなった分、ゲラゲラ笑って楽しめるお気楽B級映画としての消費の仕方が可能となっている。特にお勧めもしないし好きな人だけ観れば?という作品だけど、オレ自身にとってはこれはこれでアリ、って感じだったな。この続編がまた出たら迷わず観るよ!