飛んでゆく、南の空に

■鹿爪らしいことを書いた後はバカなことを書きたくなるもんなのである。だいたい尤もらしい言葉やもったいぶった態度というのが苦手だ。特にそれが自分の行動であった場合は、「いや、実際はそれほどたいしたもんじゃないんで」などと誰に言われた訳でもないのに異様にへりくだったりする。自分の中ではそれはバランスを取っているつもりなのであるが。
■冗談抜きに、常日頃何も考えていないのである。そして基本的に、殆どの事はどうでもいいことだと思っているのである。この歳になると目新しい事など殆ど起きないし、逆にしょっちゅう目新しい事など起きたら激しく疲労するに決まっているのである。
■日々は言ってみればルーチンワークなのだが、それはこれまでどんな道筋で考え行動すれば一番楽で疲れないかのパターンを積み重ねてきた結果であり、そしてまたイレギュラーの事態でさえ大体のことは経験しているから、たいした慌てる事もないものなのだ。自分の感情がどの程度の幅で揺れ動くかも分かっているから、ひどい気分になったとしても、それがどのような過程で治癒してゆくのかもある程度把握できる。操作の楽チンな機械ほどその楽チンのために技術を積み重ねてきたものだと思ってもらえればいいかもしれない。
■ある所に「オレ」という名の無神経で下品で適当な行動を得意とする超合金巨大ロボがいた。ロボだからタフだし超合金の外装は傷は付かないし、いざとなったらロケットパンチを繰り出す事もできるのだ。ロボの目的はただ一つ、「世界に負けない事」だ。
■しかしそれを操縦している「僕」とかいう生身の人間は、あまり詳しくは知らないのだが、ロボである「オレ」とは正反対の性格をしているのだという噂があった。多分いつもいじけている下らない弱虫なのだろう。人の目ばかり気にしているウジウジした甘ちゃんなのだろう。そんな奴だからこそ超合金巨大ロボにでも乗らないと生きていけないのだろう。つくづく難儀な糞野郎である。
■だがある日ロボは妙な事に気づくのである。ロボを操縦している筈の「僕」が、操縦席から姿を消しているようなのだ。そしてそれがいつぐらい前からだったのかまるで分からないのである。
■そしてロボは思うのだ、では今まで自分を操縦していたのは誰だったのだ?
■さらに目の前の世界に目を凝らしてみれば、今まで熾烈な戦場だと思っていた世界は、実は自分と同じような古臭いロボがよぼよぼと動き回るゲートボール場でしかないではないか。
■どのロボも、そこに存在していない見えない敵と、シャドウボクシングでもするように、なんだか一所懸命に戦っているが、どれも、形勢が悪そうだ。中には、存在しない敵に負けて、ぶっ倒れてポンコツになったロボもいる。どっちにしろ、ただただ間抜けな光景だった。
■そしてまた、ロボは思ったのだ。果たして自分は、今までいったい何と、戦っていたのか?
■そしてロボは、後ろを振り返ることもなく、この下らない場所から、さっさと退散する事にしたのだ。
■御伽噺だ。深く考えないように。
■という訳で日々は安寧と平穏のルーチンワークであり、かりそめであれ平和な自分は惚けたように何も考えていないというわけである。お陰でどんどんお馬鹿指数が上昇中だ。ひたすら平和で平穏なだけなので日記に書くようなことも殆ど無い。どっちにしろ平穏な日々が一番だ。(だよなあパセヨさん、などとちょいと語りかけてみたりして。)
■で、「鹿爪らしい」って、何で鹿の爪なんだ?