スーパーワンオペバル『金剛商店』に行ってきた

京浜急行沿線の子安駅になにやら風変わりなバルがあるらしい。昼はキムチ屋で夜は完全予約制おまかせコース料理のみのバル。マスターは一人で全てを切り盛りし、料理はひたすら美味、なによりネットの噂では、「食べきれないほどの量が出てくるので要注意」という恐るべきことが囁かれている。丁度相方さんのバースデーディナーの場所をどこにしようかと話をしていたら、相方さんが「ここがいい!」と決定したのがこの店だった。

店の名前は「金剛商店」、ここから既にバルらしくない質実剛健さが漂い、ひょっとして往年のプロレスラー、ストロング金剛氏の如き眼光鋭い禿頭巨漢の料理人ががっしと腕組をしながら客を待っているのかもしれぬ。これは面白そうだ。さてさて予約をとネットを開くと、システムがまた面白く、我々が選んだコースBプラン¥6000は、料理代金の他に¥2300分の飲料品代金が含まれているのだとか。変わったシステムだが、要するに一人¥6000でたっぷり飲み食いできますよということなのらしい(細かい部分は個々人で調べて下さい)。

という訳で予約を申し込み、この間の土曜日に相方さんとお店へと赴いた。写真では知っていたがお店の外見は「金剛商店」の名に違わぬ質実剛健な飾らない武骨さが漂う。知らない人が見たらラーメン屋か何かと間違えるかもしれぬ。そして表には噂通り手作りキムチの看板が出ているではないか。キムチとバルの組み合わせで既に異世界感が漂う外見ではないか。これは楽しみだ。

お店に入ると中は雑然としており、これまた何の飾り気もなく洒落た風情もなく、カウンターの向こうは厨房となり調理台と使い込んだ調理器具がひしめいている。ただし1枚板の広くしっかりと磨き上げられたカウンターが実にバルらしい作りで、十分に料理を楽しめそうだ。出迎えてくれたマスターはストロング金剛氏とは似ても似つかぬ黒髪を丁髷に結った好青年で、てきぱきとお店のシステムを紹介してくれた。

料理は全ておまかせのコース、大皿に盛られた2人分をシェアするシステム、皿も箸(ナイフとフォークではなく箸!)もグラスも交換なし!さらにワイン等の酒類は2階の冷蔵庫から自分で持ってくるのらしい。スーパーワンオペバルなので極限までサービスを簡素化し、料理以外の作業を極力減らしたいのであろう。当然こういった簡素化は料金の安さにも反映されているのだ。実はお店には電話もなく、だからマスターはひたすら料理を作ることのみに専念できるのである。

というわけでスパークリングワインを選び、まずは相方さんと乾杯!

最初に出てきた生ハムと洋ナシの前菜からもうただならぬ雰囲気で、量もたっぷり味も申し分ない。これは期待できそうだ。

続いて自家製パン、なにしろ厨房にパン焼き機が供えられており、そこから焼きたてほやほやのパンが供されるのだ。これは楽しいね!もちろんほかほかに熱くて美味い!

最初の料理は写真じゃよく見えないがサワラを使った魚料理、よく見えないも何もモリモリに盛っており、そしてなにしろ野菜がたっぷり。サワラは大きく品質も味も良く、仕入れの良さが伝わってくる。

この辺りでもう次のアルコールを2階の冷蔵庫から持ってくるオレ!よくわからないがとりあえず赤ワイン!値段は知らん!

お次は豚のタンの角切りをあれこれの野菜やら何やらと固めたタルトっぽい料理、添えられているペーストは多分フムス。一見何の変哲もない調理キャベツは全くえぐみがなくどうしたらこうなるんだと思わされた。タンの角切りがなにしろホロホロで最初は何なのか分からなかったほど。

そして次の料理は自家製ソーセージとコーンのパスタ。1皿を食べ終えるタイミングで次の1皿が出てくるのでテーブルが料理で一杯になる事は無いし、かと言って間髪入れず出てくるわけでもないゆったりさもある。この日は1階カウンターに3組、テーブルに4人、2階に4,5人の客がいて要するに満席、これらの客に供する料理を同時に作っているスーパーワンオペマスター!厨房でテキパキと人数分の料理を作るマスターの背中が頼もしい。

お次はサラダだが、実はもうこの辺でお腹がいっぱい過ぎてヤバイ、最後の1品がまだ待っているというのに!

ラストはメインとなる和牛もも肉(シンシン)150gの炙り焼き、焼き野菜添え。この頃にはもうオレも相方さんもお腹がいっぱいで、「美味い!でももう無理!」と嬉しい悲鳴を上げながら結局全部たいらげた!(隣のカップルは食べられなくなってテイクアウトしていた。)いやそれにしても良い肉で、この店は本当に仕入れがいい、そしてシンプルな筈の焼き野菜がまたしても美味かった。

というわけでお腹一杯確かな満足、ワインも二人で2本空けてほろ酔い気分、「食った!飲んだ!お腹キツイ!」と夜空の星に喚き散らしながら千鳥足で家路へとついたオレと相方さんだった。いやー楽しかった!