最近読んだコミックのあれやらこれやら

アイアムアヒーロー(4) / 花沢健吾

アイアムアヒーロー 4 (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー 4 (ビッグコミックス)

ゾンビ・パニック巨篇最新刊。樹海の森に逃れた主人公はそこで一人の女子高生と出会うが、ゾンビたちの追撃は止まず…といった展開のこの4巻、2、3巻ほどの大規模な地獄絵図は描かれないものの、どこまでもグダグダなヘタレ野郎の主人公が初対面の女子と相対することでさらにグダグダのダメ野郎振りを浮き彫りにしつつ、そのダメ野郎ぶりに次第に変化が見えてくる。オレはこの物語、主人公が最後までダメ人間を貫き通し、ダメな人間は最後までダメというシニカルなドラマとして終わるかと思ったがどうやらそうではないらしい。なにしろ第1巻をまるまる主人公の背景と性格描写に費やしたこの物語だからこそ、作者の中では最後まできっちりとした構成がなされているのだろう。"生き残る"というひどくシンプルで根源的な渇望に目覚めたダメ野郎が今後どのように変わっていくのかが楽しみだ。そしてこの4巻ではついに主人公の持つ銃が火を噴くが、「銃で他人を撃つ」ということの重みがきちんと描かれる。いわゆるゾンビたちにも奇妙に人間だった頃の記憶が残っていることも描写される。単なるゾンビ・ストーリーに終始しない作者の意気込みがじわじわと伝わってくる素晴らしい展開を見せる第4巻だ。

■東京怪童(3) / 望月ミネタロウ

東京怪童(3) <完> (モーニング KC)

東京怪童(3) <完> (モーニング KC)

いつのまにかひっそりと完結していた望月ミネタロウ『東京怪童』、その最終巻である。脳に何がしかの障害を抱える者たちの集う療養所で繰り広げられるドラマは、剥き出しの痛々しさに満ち溢れていると同時に、ひどく繊細でリリカルな世界を垣間見せる。健常人が見ることの出来ない世界を見ることの出来る彼らは、その痛みに満ちた生の彼方に、健常人では辿り着くことの出来ない遥かな高みにある救済のヴィジョンを幻視する。ユニークな登場人物たちを配しながらも、それらが全て巧く生かされていたかどうか疑問の残る部分は若干あるし、全3巻という作者にしては短い連載であったことから、作者の描きたかったことが描ききれていたのかどうか、もともとこの長さの物語構想だったのか知るすべもないが、漫画家・望月ミネタロウのエポック・メイキングな作品たり得たことは間違いがないだろう。実際のところ,望月の作品はこれまで余さず読み続けてきたが、この『東京怪童』ほど愛すべき作品は最近までなかったと思うほどだ.。草原、空、森、そして遥かな宇宙が繰り返し背景として登場し、そのなかで小さな存在として描かれる登場人物たちがどこまでもいとおしい。

ユビキタス大和(4) / ルノアール兄弟

ユビキタス大和(4)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

ユビキタス大和(4)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

変態!低IQ!モッコリビキニパンツ以外ほぼまる裸のユビキタス大和が、時折全裸になりつつ、股間と尻をプリプリと強調してワケの分からないセクシーダンスを踊り狂う!その性格は姑息!卑屈!魯鈍!ギャグマンガの主人公として申し分のないしょーもなさ!この変態少年(?)が、彼にさらに輪をかけたような変態な登場人物たちと共に愉快で気色悪いめくるめく変態の王国を突き進む!とりあえずなにもかもおかしいが一番髪型がおかしいぞユビキタス大和!そしてこんなに楽しかったユビキタス大和だが今巻が最終巻だ!オレの中では「山上たつひこギャグの正統な後継者」と思っていただけにちょっと残念だな!しかし変態は死なぬ!何度でもよみがえるさ!

■四姉妹(シトラスエンカウント(1) / 大島永遠

四姉妹エンカウント (1) (ファミ通クリアコミックス)

四姉妹エンカウント (1) (ファミ通クリアコミックス)

週刊ファミ通で連載中のこの漫画、10代から20代のうら若き四姉妹が住むマンションの隣に大学生男子が引越してきて…という設定から、またぞろしょーもないラブコメ展開の漫画かよ、とナメてかかっていたらこれが大間違い、この四姉妹というのがなんと"超"の付くゲームマニアで、大学生男子をエサにひたすら鬼畜なゲーム話で盛り上がる、というギャグマンガなのであった。もちろんロマンチックな展開は一切なし!作者が女性のせいか「よくもまあそこまで」と思っちゃうような細かいくすぐりの入ったギャグが連発され、今や週刊ファミ通で一番好きな漫画である。

東京トイボックス(6) / うめ

大東京トイボックス(6) (バーズコミックス)

大東京トイボックス(6) (バーズコミックス)

ゲーム作りに熱い情熱を燃やす主人公がまたもや熱く吼えるゲーム制作現場コミックである。さらにこの第6巻ではゲーム・レーティングを巡るややこしい状況が取り沙汰されており興味が尽きない。しかし熱い情熱で作られるその熱いゲームがラブラブ・シューティングである、という部分にも日本のゲーム制作事情のあんまり芳しくない一端が垣間見えているような気がする。オレはこんなゲームやりたくないもんなあ。