インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト(Apple TV+映画) (監督:ダグ・リーマン 2024年アメリカ映画)
食い詰め者の男二人が裏組織の立てた現金強奪計画に参加するが、計画があまりに杜撰なせいで事態が思わぬ方向へと悪化し大わらわ、というクライム・コメディ。Apple TV+配信映画。
【STORY】自暴自棄になっているローリー(マット・デイモン)と前科のあるコピー(ケイシー・アフレック)は、強盗を実行するために手を結ぶ。しかし、強盗は失敗。二人はローリーのセラピスト(ホン・チャウ)を巻き込み、警察や官僚、犯罪組織のボスの追っ手を振り払い、出し抜こうとする。
主役を演じるのがマット・デイモンとケイシー・アフレック、これに絡むのが「ミッション・インポッシブル」シリーズのヴィング・レイムス、『ヘルボーイ』のロン・パールマンなどの豪華キャスト、さらに監督が『ボーン・アイデンティティー』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のダグ・リーマンというから興味をそそられ観てみることにした。
なにしろ裏組織による強奪計画がグダグダ過ぎて当然のごとく失敗する、という冒頭から既に脱力気味。観ているこちらも「強盗する気あんのかお前ら!?」とニマニマしながら突っ込んでしまうほどのしょうもなさなのだ。そんな中、「言わんこっちゃない」とボヤきながら逃走する主人公ローリー(マット・デイモン)とコビー(ケイシー・アフレック)の、これまた力の抜けたお惚けぶりが可笑しさを誘う。二人を執拗に追う特殊部隊員フランク(ヴィング・レイムス)はターミネーターばりの凶悪さで、多分体の中身は機械(違)。
一方タイトルにあるセラピストとはローリーのセラピスト、ドナ(映画『ザ・ホエール』でアカデミー賞ノミネートの女優ホン・チャウ)のことだが、途中ローリーとコビーの逃走を不承不承助けることになり、余計な提案をして混乱をさらに加速させる。こんな具合に登場人物の行動に常に「しょうもねえな……」と呆れ返りながら付き合うのがこの映画の面白さだ。ダグ・リーマン監督作とはいえアクションは控えめ、むしろ俳優たちの醸し出す気易くて和気あいあいとしたケミストリーが楽しさへと結びつく、そんな作品だった。