『アイス・ロード』『異人たち』など最近ダラ観した配信あれこれ

『アイス・ロード』

アイス・ロード(監督:ジョナサン・ヘンズリー 2021年アメリカ映画)

リーアム・ニーソンのアクション映画は結構好きなのだが、あまりにも出演作が多いせいでどれを観たのか観ていないのか段々と分からなくなってきている。この『アイス・ロード』も最初「なんかリーアムおじさんが雪の中でジタバタする映画は観たような気がするんだが……」と頭の中でグルグル考えていた。しかしその正解は『スノー・ロワイヤル』であり、『アイス・ロード』ではなかったので目出度くこの『アイス・ロード』を観ることとなった(周りくどい)。

物語は坑道崩落事故により生き埋めになった作業員を救うため、掘削機械をトラックで現地に届けることになった男たちの危険に満ちた道行を描くもの。タイムリミットの迫るなか、最短距離を走るには氷結した湖の上を走行しなければならず、しかし春先でその氷は溶け始めていたのだ。こうして氷上版『恐怖の報酬』ともいうべき物語が始まる。タイヤの下でミシミシと割れてゆく氷の恐怖、一歩間違うと湖中に落ちてしまうスリルとサスペンスは格別だ。さらにアクシデントが次々と襲い、観ているこちらまで生きた心地のしない緊張が延々と続く。

おまけに妨害工作まで発覚し、なんちゅうミッションポッシブルやあ!と思わせる。後半から氷上を抜け出し、妨害工作員とのカーチェイスがメインとなってしまう部分は少々凡庸だったかもしれないが、全体的には質の高いスリラーアクションであったと思う。

異人たち (監督:アンドリュー・ヘイ 2024年アメリカ・イギリス映画)

異人たち

異人たち

  • Andrew Scott
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大林亘彦監督による1988年の映画『異人たちとの夏』は結構好きな作品で、やはり大林亘彦は別格だよなあとしみじみ思わせてくれた。原作は山田太一の同名小説となるが、これをアンドリュー・ヘイ監督が再び映画化したのがこの『異人たち』となる。

率直な感想を述べるなら、どうにも「コレジャナイ」感の強い出来具合だった。大林亘彦監督作品の印象が強すぎて、どうしても比べてしまったせいもあるだろう。大林監督版は生きることの寂しさと同時にある種の郷愁がメインとして描かれていたように思うし、生者と死者のぼんやりとした境界を行き来しつつ、やはりそこに相容れるものはないのだという切なさが存在していたのではないか。

しかしヘイ監督版はひたすら孤独感と愛への飢餓感にクローズアップしており、その情緒の扱いが強過ぎるのと同時にストレート過ぎて、物語に想像や解釈の余地がないのである。おまけに呆れるほど感傷的だ。また、死者が死者であるという事実をぼんやりとした表現で描いているばかりに、生者と死者の分かち難い境界という寂しさが伝わってこないのだ。

そもそも父母の霊に前向きに生きると誓いながら、あのラストはどうにも後ろ向き過ぎないだろうか。孤独が孤独のまま終わってしまい、結局何も変わらないじゃないか。なんだか自己憐憫と自己陶酔を煮詰めたようなお話しだよなこれじゃあ。ただし、大林監督版の映画作品は原作と多少ラストが違うのらしく(実際には確認していない)、実はヘイ監督版の方が原作に近いということも考えられる。そういった部分であくまで大林監督版との比較という意味でとってもらいたい。